2002年7月、虎ノ門に港屋(みなとや)という名の小さな立ち食い蕎麦屋がオープンしました。でも、ただの立ち食い蕎麦屋ではありません。港屋は、今や全国にインスパイア系の蕎麦屋を多数生み出すことになった「ラー油そば」の発祥のお店。創業当時は「なぜ蕎麦にラー油?」と怪訝に思われていた港屋の冷たい肉そばは、あっという間に周辺のビジネスマンにその存在を認められるようになり、漫画「課長 島耕作」にも度々登場するような有名店になってしまいました。
そんな港屋ですが、2019年2月に「どうやら寿命が来た様です。」と書かれた貼り紙を残して、突然閉店してしまいました。何の前触れもない突然の閉店に、港屋ロスでショックを受けた常連さんも多かったとか。
でも幸いなことに、港屋は閉店の前に、ちゃんと遺伝子を残してくれていました。そのお店が今回ご紹介する大手町の高級ホテル・星のや東京1階にある港屋2。2016年に本店の別館的な立ち位置でオープンした2号店ですが、今ではここが元祖ラー油そばの味を求める人の聖地となっています…
初めての人にとってはややこしい、港屋2の行列の並び方や店内での作法を解説
その港屋2で食べられるラー油そばをご紹介する前に、まずは初めての人にとってはややこしい、行列の並び方や店内での作法を順を追って説明していきましょう。
港屋2の場所は星のや東京のビルの1階南東角。行き方は東京メトロの大手町駅のA1出口またはC1出口からすぐ。ホテルと入り口が別なので、ホテルに宿泊していなくても問題なく利用できます。ただ、港屋2の入口自体がすごくわかりにくいです。お店の外観が完全に黒ガラスで周りと同化してしまっているし、お店の目印になるものも…
柱に取り付けられた“Minatoya 2”と書かれた小さな看板しかないのですから。
この日の僕は開店時間の1時間前に現地に到着していたのですが、どこに並べばいいかがさっぱりわからなかったんですよね。なので、他のお客さんが集まり出すまで周辺をぶらついて時間を潰してました。実際の入り口の場所はこの記事の最後の画像を参照してもらえれば…と思いますが、まだ行列ができる前にお店に着いてしまった場合は、ポールポジションを諦めて他のお客さんが集まり出すのを待つのも一つの手ですね。
この日は開店30分くらい前から徐々にお客さんがやって来て、そこからどんどんスーツを着たビジネスマンが集まるようになり、開店時間には30人くらいの行列になっていたでしょうか。その後もどんどんお客さんが集まってかなりの混雑になりますが、港屋2は立ち食いそば屋なのでお客さんの回転はすごく早く、見た目ほどの待ち時間にはならないと思います。
さて、開店時間になると中から店員さんが出てきて、お店の脇に置いてある黒い物体のコンセントを入れていきます。その黒い物体は、実は簡易式の券売機なのですが…
この画像に示すように、港屋2のメニューは冷たい肉そば(お値段 税込1000円)の一択。サイドメニューどころか大盛り設定やトッピング追加も一切なし。しかもこの券売機、千円札しか受け付けてくれないクセの強いやつでして…そんなわけで、港屋2では行列に並ぶ前に両替して、確実に千円札を手元に置いておくようにしましょう。
ここで食券を購入したら、いよいよ店内へ。入口を潜ると右手に小さなカウンターがあって、手前に置いてある食券入れに先ほど購入した食券を入れてから前に進み、盛付け済の肉そばを受け取って、左手にある立ち食い席(全部で12人分あります)へ移動しましょう。お冷やはありませんが…
カウンターに用意されている蕎麦湯はセルフサービスで自由に飲めますし、外からドリンクの持ち込みもOK。実際、コーラのペットボトルを持ち込んでいる人もいましたね。
冷たい肉そば:伝説となった港屋の元祖ラー油そば、港屋2で実際に食べてみると…
それでは、もはや伝説となった港屋の遺伝子を継ぐ、港屋2の冷たい肉そばをご紹介しましょう。画像はこちら…
豚しゃぶがこんもりと盛られたそばに、表面がラー油色に輝くつけ出汁、そして生卵…今でこそかなり認知が広まったスタイルの蕎麦ですが、初めてこの蕎麦を見た人はきっと「何じゃこりゃ?」と思ったでしょうね。
では、早速そばからいただくことにします。軽く角のとれた蕎麦はものすごいコシの強さ…というか、二郎系ラーメンのオーション麺のようなゴワゴワ食感と言ってもいいかもしれません。このラー油そばを出すお店が「そば界の二郎」と呼ばれるように、この麺のゴワゴワ感がガッツリ系男子の欲求に合ったのでしょうね。
実際「歯が弱い人には辛いんじゃ…」と思うくらいの麺の硬さなのですが、太さは一般的なラーメンの太麺くらいで、喉越しは良くてスルスルと胃袋に収まっていきます。それとは別に、硬めのそばを飲み込む時のちょっとした抵抗感がプラスに働いて、「ガッツリ食べた」という幸福感が普通のそばを食べた時よりもはるかに上を行きます。
一方のつけ出汁は、元々はかなり甘めの味付けになっているのですが、その甘みを凌駕するほどのラー油の香ばしさ…鰹の出汁はほぼ感じられないというか、むしろ「ラー油が出汁!」といった感じになっています。おそらく大量のラー油が入っているものと思われますが、辛さはピリ辛程度で意外とそれほど辛くないんですよね。口の中ではピリッと甘辛で、喉元を過ぎた頃にラー油の香ばしい香りがツンツンと鼻を刺激してきて、すぐにまた次の一口が欲しくなる…そんな無限ループに陥って、箸の回転が止まらなくなります。
そばの香りを楽しみたい人にとっては、きっとこのつけそばは「まずい」ということになるのでしょう。でも、伝統的なそばの香りや出汁感をそれほど気にしない人にとっては、この肉そばは絶好のジャンクフードになる可能性を秘めています。蕎麦の強力なコシにも全然負けず、むしろお互いの存在感がうまく噛み合って、猛烈なインパクトのある唯一無二のつけそばになっています。こりゃ、周辺のビジネスマンが足繁く通うようになるのもわかりますよ。
この肉蕎麦を半分くらい食べたところで、付属の生卵をお出汁に投入。生卵を溶いたつけ出汁に浸して肉そばを食べると、どことなくすき焼きを食べているかのような気分になってくるから不思議。でも、他のお客さんの中には、つけ出汁ではなくそばの方に溶き卵を混ぜてぐちゃぐちゃにしている人もいましたね。このように、港屋2の肉そばは食べ方自由。コーラを持ち込んでもOKだし、自由な食べ方を許容しているところも、このお店の魅力の1つなのかもしれません。
そばを食べ切った後は、お出汁を蕎麦湯で薄めて一気に完飲。蕎麦湯で半分に薄めても、ラー油の香ばしさはしっかり残ってましたね。これを食べてしまった後は、今後そばにラー油抜きでは味気なく感じてしまうかもしれません。そんなある意味危険な食べ物ですが、他では食べられない刺激的なものを食べたい…という気分の時には、港屋2のこの冷たい肉そばはめっちゃおすすめです。
せめて会計システムだけ何とかならないかなぁ…港屋2へのアクセスは、東京メトロ・大手町駅から徒歩1分
さて、こんな感じの港屋2、評判通り肉そばは美味しいし、ものすごい行列ができるのも十分納得なのですが…やっぱり千円札しか受け付けてくれない簡易型券売機での会計はなんとかして欲しいですね。お客さんにとっても不便だし、お店側にとってもこのご時世に簡単に値上げできなくて不便じゃないですか?今後キャッシュレス決済なんか導入してくれたら、僕たちも便利だし、お店の手間も省けて一石二鳥だと思うのですが、どうでしょう?お店の人、この記事を読んでくれていたら、ぜひ一度考えてみてもらえませんか?
それでは、お店の詳細です。店舗データはこちら…
港屋2 5点満点中
住所:東京都千代田区大手町1丁目9
電話番号:非公開
営業時間:11:30-14:00(売り切れ次第閉店)
定休日:土日、祝日
駐車場:なし
クレジットカード払い:不可(食券制、千円札以外は利用不可)
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