日本三大うどんの一角・稲庭うどんの始まりは今より350年以上前の寛文5年(1665年)。以来、一子相伝で受け継がれてきた稲庭干饂飩の製造技術ですが、1860年に血筋が途絶えることによる製法断絶防止のために、本家の人とは別に特別に技術を伝授された人がいました。その人が稲庭うどん専門店を創業した万延元年(1860年)が、現在まで稲庭うどんの伝統を引き継ぐ佐藤養助商店の始まり。その人は二代目佐藤養助を名乗り、現在は八代目佐藤養助が中心となって、稲庭うどんの文化継承・発展に尽力しています。
今では通販などを通じて全国どこでも食べることができる稲庭うどんですが、その本拠地は昔も今も秋田県湯沢市の稲庭町にあります。稲庭うどんを語る上では絶対に外せない佐藤養助の総本店、稲庭うどん好きなら一度は言っておかなければなりませんよね…
バスサンドの旅厳禁!佐藤養助 総本店まで秋田駅から片道2時間半かけて行ってきた
秋田県湯沢市にある佐藤養助 総本店で本家の稲庭うどんを味わうために、僕は朝8:09発の新庄駅行き列車に乗り込みました。事前のGoogleマップでの調査によると、9:34に十文字駅に到着、そこから10:14に稲庭方面へ向かうバスが出ているとのことでした。
その予定通りに十文字駅で列車を降り…
前方左手にあるバス停内でバスの到着を待ちます。
訪問時点でのバスの時刻表はこんな感じ。10:14のバスを逃すと次は約4時間後という、都心部では考えられない運行スケジュール。実際には2駅先の湯沢駅まで行けばもう少しバスの本数があるので、これを逃しても日中のうちに佐藤養助 総本店まで行けるんですけどね…
予定から10分ほど遅れて到着したバスに乗って稲庭町へ。途中渋滞その他のトラブルなく順調にバスは走っていき、10:50頃に目的地の稲庭中町バス停に到着。レストランの開店(11:00)まであと10分、何とか開店前にお店に来ることができました。
お店に行く前に、忘れずに帰りのバスの時刻表をチェック。一応事前に調べてありますが、確かに1時間後の12:07に湯沢駅方面へ向かうバスがありますね。今回は白河ラーメンの聖地・とら食堂の時のような「帰りバスサンドの旅」は無事避けられそうです。
でも、佐藤養助 総本店から最寄り駅のJR湯沢駅までは片道約13km。とら食堂の時の倍以上の距離がある上に、途中で山越えもある過酷なコース。相当気合が入った人ならバスサンドの旅も不可能ではないですが、当ブログではあえて「バスサンドの旅厳禁!」ということにしておきましょうか…
レストラン以外にも売店、工場見学、製造体験も…佐藤養助 総本店はこんなお店
佐藤養助 総本店の店内レイアウトはこんな感じになっていて…
建物に入ってすぐ左手にお土産用の商品を売っている売店が…
右手に数々の稲庭うどんメニューを堪能できるレストランがあって、さらにその奥には現在も稼働している稲庭干饂飩の製造工場があります。ガラス越しに作業工程を見学できる他、今は新型コロナの影響で休止していますが、一般のお客さん相手に稲庭干饂飩の製造体験もやっているようです。
さて、レストランの方に話を戻しましょう。佐藤養助 総本店内にあるレストランは、食べログ情報で個室席含めて総席数66席を有する、うどん屋としてはかなり大型の店舗。お世辞にも都会とは言えないのどかな風景が広がる場所にあるお店ですが、意外にもツーリング途中のライダー達で店内はかなり混雑していて、僕が入店した時も見渡す限りの客席はほぼお客さんで埋まっている状態でした。交通に不便な立地にもかかわらず、ものすごい人気ですね。佐藤養助 総本店、恐るべし…
温うどん、冷うどんからぶっかけ、タイカレー風まで…佐藤養助 総本店でまず稲庭うどんの様々な楽しみ方を知るべし
誕生から350年以上の歴史を持つ稲庭うどん、その総本家である佐藤養助 総本店ですが、ここで楽しめる稲庭うどんのメニューは昔からの伝統にこだわったものばかりではありません。メニュー例をいくつか挙げると…
- せいろ醤油 850円
- せいろ胡麻味噌 900円
- かけうどん 850円
- 天麩羅温うどん 1650円
- 海老天おろしうどん 1300円
- 温玉肉味噌つけうどん 1100円
- タイカレー二味セット 1400円
こんな感じ(値段は税込)。昔ながらのスタイルで食す温うどんや冷うどんに加えて、讃岐うどんで有名になったぶっかけや、タイカレーにつけて食べるオリジナルメニューまで、ざっと見積もってもメニューの種類は20種類以上。特にレッドカレーとグリーンカレーの2つの味で稲庭うどんを楽しめるタイカレー二味セットは、若い女性客にかなりの人気なんだとか。
このメニューを眺めるだけでも、「稲庭うどんにはいろいろな楽しみ方がありそうだ…」ということが伝わってきますよね?稲庭うどんファンはもちろん、稲庭うどんが初めてという人には特に、讃岐うどんにも負けない味のバリエーションが楽しめることをまずは知って欲しいですね。稲庭うどん好きがもっと増えれば、きっと今の讃岐うどん一強の風潮に巨大な風穴を開けられると思うので…
二味せいろ二段:佐藤養助 総本店の一番人気メニューはこれ!醤油だれとごまだれの2つの味で食す稲庭うどんは…
それでは、佐藤養助 総本店で実際に稲庭うどんを味わってみましょう。今回僕が注文したのは、お店の一番人気メニューである二味せいろ(の稲庭うどん倍量バージョン・二味せいろ二段:お値段 税込1730円)。冷うどんを醤油だれとごまだれの2種類のタレで食す、極めてオーソドックスな稲庭うどんのメニューなのですが…
綺麗に編み込まれた2玉の稲庭うどんが麗しく見えませんか?表面はきめ細かく、キリッと角が立っていて、織り込まれてできた麺のカーブがしなやかで…讃岐うどんの豪快で男性的なイメージとは対照的に、稲庭うどんからはおしとやかで女性的なイメージを感じます。
この綺麗なうどんの盛り付けを崩すのをもったいないと思いつつ、うどんを数条引っ張り出して、まずはそのまま口に入れてみます…見た目通り表面がきめ細かく繊細で、唇に触れただけでその上品さが伝わってくるかのよう。かといって弱々しいばかりではなく、しっかり冷水で締められた麺は細麺と思えないほど強いコシを携えていて、他の何者にも例えられない独特かつ最高の食感が楽しめます。
この最高な食感をもつ稲庭うどんを、鰹と昆布の出汁が聞いた醤油ダレと…
白胡麻風味の甘く濃厚な胡麻味噌ダレにつけて食べるわけですが…
何も考えずに食べたら、こんなの3分と経たずペロリです。そんなのもったいなさ過ぎる…稲庭干饂飩独自の「手綯(てない)」という工程を含めて、3日間かけて1本1本丁寧に作られた稲庭うどん、そのうどんの魅力をじっくり味わわずにカップラーメン作成時間より早く消費してしまうなんて、何と罪作りな…そんなことを考えながら、はやる気持ちを必死で抑えながら食べてたんです。
なので、やっぱり今回せいろ二段で注文して正解でした。うどん一皿目がなくなりそうな時にタイミング良く二皿目が到着して、もう心の中で歓喜でしたね。「もう一回稲庭うどんが楽しめる!」って感じで。でも二皿目は備え付けのゆず七味でちょっと味変して…
醤油だれはゆずの香りと七味のピリ辛をそのまま感じながら、胡麻味噌だれは甘味を引き締めて両方の味をしっかり堪能。最後はつけだれまで飲み干して完食しました。食後の幸福感もハンパないです。ホント、朝早起きして湯沢まで来てよかったです。実は僕、この後秋田に戻ってまた稲庭うどんが食べたくなって佐藤養助に立ち寄ったんですが、それはまた別のお話…
というわけで、稲庭うどん大好き人間からのご報告でした。ただ1つだけ補足すると、現在稲庭干饂飩の製造技術は一子相伝ではありません。それは先代の七代目佐藤養助が昭和47年に技術を一般開放したからです。これによって稲庭干饂飩の製造技術は家業から地域の産業へと発展し、様々なブランドの稲庭うどん専門店が誕生することとなりました。
その技術一般開放が稲庭うどんの認知度upに一役買ったのは間違いないのですが、一方でそれぞれのブランドにより製法にアレンジが入るようになり、多くのブランドの製法は350年以上続いた製法からは少し外れたものになってしまっています。その意味では、一子相伝で残してきた技術をそのまま引き継いでいるブランドは佐藤養助とその系列店だけと言ってもいいかもしれません。稲庭うどんのことを知りたくなったら、まずは佐藤養助の稲庭うどんを食べてみてください。わざわざ秋田の山奥まで行かなくても、今は東京の銀座(ミシュラン掲載店)や日比谷、浅草にも支店がありますし、全国どこにいても通販やふるさと納税でお取り寄せもできますので…
天ぷら 正心庵や別館 養心庵でも稲庭うどんの新たなチャレンジが…佐藤養助 総本店へのアクセスは、最寄り駅のJR奥羽本線・湯沢駅から羽後交通バス湯沢・小安線 皆瀬庁舎前行きに乗り換え、稲庭中町バス停下車徒歩1分
そんな佐藤養助 総本店ですが、道路を挟んで向かい側には八代目佐藤養助が自ら手綯した稲庭うどんを天ぷらと共にいただける「天ぷら 正心庵」や…
歩いてすぐのところに稲庭うどんだけじゃなく、稲庭中華そばや川連カレーも食べられる「別館 養心庵」があって…
うどん好きの食いしん坊にとってはなかなか魅力的な場所となっています。「超」が付くくらいの老舗なのに、伝統に驕らずどんどんチャレンジをしていく姿勢にも好感が持てます。
稲庭うどんだけでなく、天ぷらも食べて稲庭中華そばも試してみて…稲庭うどんの製造体験も合わせたら、きっと朝から夕方まで1日中楽しく過ごせるでしょうね。秋田の文化を体験する意味でも、秋田観光の1日をここで過ごすのはすごくおすすめです。
それでは、お店の詳細です。店舗データはこちら…
佐藤養助 総本店 5点満点中
住所:秋田県湯沢市稲庭町稲庭80
電話番号:0183-43-2911
営業時間:9:00-17:00(食事は11:00から)
定休日:年末年始のみ
駐車場:あり
クレジットカード払い:可(電子マネーにも対応)
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