神社で神様に奉納する馬…そんな神聖な馬を店名にした京都の居酒屋・神馬(しんめ)。昭和9年(1934年)創業という老舗で、現在は三代目が中心となってお店を切り盛りしている家族経営のお店。実は食べログの居酒屋百名店にも選出されるほどの人気店で、作家の太田和彦さんや吉田類さんなど多くの著名人が上洛した時に通っていることでも知られています。
その老舗居酒屋・神馬に、とある週末の夜に予約なしで訪問。我ながら「ちょっと無謀かな?」と思えたこの訪問ですが、実際に行ってみると…
とにかく存在感が際立っている…京都の老舗居酒屋・神馬はこんなお店
僕が神馬に着いたのは、ちょうど夜の7時頃だったでしょうか。昔の土倉をそのまま残したかのような外観は、周囲にある近代的な建物から明らかに浮いて見えますね。でも、変な意味じゃありません。とにかく存在感が際立っています。造りものじゃない、本物のレトロ空間…創業から約90年(建物自体は100年以上の歴史があるようです)続いてきた風格のようなものが、その外観からひしひしと伝わってきます。
さて、早速店内に入ると…案の定、満席で入店できませんでした。でも、この日はどうしても神馬で一杯やりたい気持ちが強く、周辺をふらついて時間を潰して、夜の8:30に再度アタックするというさらに無謀なチャレンジを敢行。失敗したらその日の夜はコンビニ弁当決定だし、成功してもラストオーダーまでたったの30分。なかなか厳しい条件ですが、8:25頃にお店に行ったらかろうじて1脚カウンター席に空席が。賭けに勝ってほっと一息の入店となりました。
神馬の入り口をくぐると、目の前にはちょっと変形したコの字型カウンターが全部で18脚。そのカウンター席の奥には太鼓橋があって、そこを渡ったスペースに大きなテーブルが置いてありました。食べログ情報では総席数は30席。余談ですが、太鼓橋の奥のスペースは、もともと住居として使っていたところを客席に改築した部分なんだとか。
外観だけでなく、店内もかなり古そうな木材が張り巡らされた、いかにも歴史を感じる内装。そこにポスターやら新聞記事やらが無造作に貼られていて、今時の大衆居酒屋にはない独特な雰囲気が醸し出されています。高級感はありませんが、何と言うか「誰が来ても居心地が良い」というような大衆的な雰囲気もありません。接客は丁寧ですが、どことなく京都っぽい距離感重視みたいなオーラがあって、人によっては苦手に感じることがあるかもしれませんね。ただ、そんな古風なお店でも、全席禁煙になっているのは僕としてはありがたいなぁ…
神馬のメニューはほとんどが日替わり…季節や当日の仕入れ状況に応じて、その日に一番美味しいものが食べられます
そんな名店・神馬で食べられるフードメニューをご覧ください…
お造りや珍味、天ぷらなど、魚介系の食材を中心にしたお料理メニューが、パッと見でも50種類くらいはありますかね…でも、これらのメニューは固定ではありません。「その日その季節に美味しい新鮮な物をお客様に味わっていただく」のが神馬の営業スタイル。今日あるメニューが明日も食べられるという保証はどこにもないんです。
お値段も概ね1品1000円超え(税込)と、僕たち庶民にとってはちょっと「うっ…」となる感じ。中には伊勢海老やカニなど高級食材もあって、一品5000円を超えてますからね…一般的な目線からすると、いつでも気軽にやって来てリラックスできるお店というよりは、特別な日にちょっと奮発していい気分に浸るためのお店という位置づけでしょうか。
そんな感じで、どこか一期一会的なものを感じる神馬のメニューですが、いつ来ても食べられる定番メニューもいくつか用意されています。一期一会メニューでお腹を満たすのも良いですが、次に来店するチャンスがあった時のために、定番メニューの中からお気に入りを見つけるのもいいかもしれません。
神馬の定番メニュー例(値段は税込)
- きずし(鯖を酢締めしたもの) 1155円
- だし巻き 440円
- 地鶏塩焼き 1045円
- かもロース 1100円
- 鯨ベーコン 1760円
- とろ鉄火巻 990円
- 大葉としば漬けの飯むし 880円
ラストオーダーまでたった30分しかなかったけれど…この日の僕が神馬で注文した全4品+1を順にご紹介
それでは、この日の僕が神馬で注文した全4品+1を順にご紹介しましょう。ラストオーダーまでたった30分しかなかったけれど、しっぽり一人飲みをそれなりには堪能できました…
灘の六種ブレンド
まずは神馬に来たら注文必須のお酒・灘の六種ブレンド(お値段 1合550円)。日本有数の酒どころである灘五郷の銘柄6種類を壺に入れてブレンドさせたものです。元々は初代店主が「どの銘柄も同じだけ売ってあげたい」と思って始めた6銘柄のブレンド酒ですが、今では神馬の代名詞と言っても良いくらいの、なくてはならないお酒です。
熱燗でも冷酒でも、どちらでも注文可能。灘のお酒といえば淡麗辛口なものが多く、この灘の六種ブレンドも一口飲めば口の中に残った料理の余韻をサーっと洗い流してくれます。きっとどんな料理にも合うでしょうね、これ。日本酒が苦手でなければ、神馬で灘の六種ブレンドはマストアイテムでしょうね。おすすめです。
造り盛り合わせ四種
お通しを食べ終えてから目の前に運ばれて来たのが、この造り盛り合わせ四種(お値段 1430円)。メニューには四種とありましたが、実際は鯛、シマエビ、マグロ、イカ、サワラの塩焼きの5種類ありました。
他の大衆居酒屋と比べれば値段は高めですが、どれも素材は確かですね。海から遠い京都市内でこんな質の高い魚が食べられるなんて、良い時代に生まれてよかったなぁ…と感じます。
ノドグロの塩焼き
そしてこの日のハイライト・ノドグロの塩焼き(半身、お値段 1650円)。しっかり脂の乗ったのどぐろに淡麗辛口のブレンド酒を合わせるなんて、飲兵衛なら絶対にハマる組み合わせじゃないですか?
シンプルに塩だけで味付けしたノドグロの塩焼き。でも、その塩加減が絶妙すぎて、のどぐろの濃厚な脂とともに麻薬級の旨さを舌の上に広げるんです。その味を支える焼き加減は、明らかに居酒屋のレベルを超えています。そんな激ウマのノドグロも、普通は食べ進めていくうちに舌の感覚が慣れてきて感動が薄れるものですが、灘の六種ブレンドがあれば毎回口の中をリセットできるので最初の感動が何度でも味わえます。やっぱり灘の六種ブレンドはマストアイテムだわぁ…
寿司三種盛り
ラストオーダーの時間になって、その日の〆として2品を追加。まずは神馬の定番メニューから寿司三種盛り(お値段 1100円)。同じく定番メニューの鯖寿司(1個330円)、鯛小袖寿司(1個330円)、はも寿司(1個440円)が1つずつ中皿に乗って出て来ました。
1つ1つは一口では食べきれないくらいで、それなりにボリュームはありますね。程よい酸味の鯖寿司に木の芽の香りが広がる鯛小袖寿司、そして甘辛醤油味のはも寿司。ちょっと物足りなく感じた時につまむのに最適なメニューです。
すっぽん鍋(小)
そしてこれまた神馬の定番メニューの1つ、味噌汁代わりに注文したすっぽん鍋(小サイズ、お値段 1540円)。茶碗サイズの小さな土鍋の表面からは、生姜の香りがふんわりと漂います。
生姜とすっぽん出汁が合わさった薬膳スープのようなお出汁。身体にじんわり沁み渡るような優しい感じが〆にちょうど良いですね。そこに、鶏ささ身のような肉質のお肉とゼラチン質の部分を併せ持ったすっぽん肉がコロッと数個…口に放り込むとプルプルしたゼラチン質の部分が口の中で踊ります。
以上4品+1、時間が短かったので急いで注文した感じはありますが、しっぽり一人飲みの贅沢さは十分に堪能できました。京都だけでなく、全国にファンが多いのもわかります。せっかく京都に来たのだからちょっと贅沢したい!という気分の時にはおすすめです。僕のように駆け込みではなく、ぜひ事前予約を取ってお店に行ってみてください。
テイクアウトメニューもあり!神馬へのアクセスは、最寄り駅の京福電鉄・北野白梅町駅から徒歩15分
そんな京都の老舗酒場・神馬では、実はテイクアウトもやっています。テイクアウトメニューは以下の6種類…
- 日替わり弁当 1800円
- 鉄火丼 1600円
- 海鮮丼 1600円
- 角煮丼 900円
- 天丼 1200円
- ローストビーフ丼 1500円
これらのお持ち帰りメニューは11:30-14:00のランチタイムにも利用可で、正規の営業時間ではないものの店内での食事もできるようです(小鉢とお吸い物がついて、お値段10%up)。夜の時間帯にはどうしても都合がつけられない方や、お酒は飲まないけれど美味しい海鮮料理が食べたいという方は、ランチタイムにこれらのメニューを試してみてはいかがでしょうか?
それでは、お店の詳細です。店舗データはこちら…
JR京都駅方面からだと京都市営バス50番系統立命館大学前行き、四条河原町・烏丸方面からだと市営バス46番系統千本通・上賀茂神社行きを利用。それぞれ千本中立売バス停下車すぐです。
P.S. 京都で居心地のいい居酒屋をお探しのあなた、ぜひこちらの記事にも立ち寄っていってください…
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