四条河原町界隈で最も人気の高いラーメン屋といえば、おそらく麺屋猪一(いのいち)の名前が真っ先にあがることでしょう。麺屋猪一は2013年に創業して6年とまだまだ新しいお店ですが、すでに京都のラーメンランキングに当たり前のように掲載され、2016年から毎年ミシュランのビブグルマンに認定され続け、食べログのベストラーメンにも選出されるなど、着々と実積を積み重ねています…
麺屋猪一|ラーメンでありながら日本蕎麦への探究を続ける、一本筋の通ったミシュラン認定店
ある日の夜、寺町通り沿いにあるお店を訪ねると(2019年5月1日に寺町高辻から現在の新店舗に移転しました)、店の外に掲げられたメニューを眺めながら入店を迷っているようなお客さんが1人。人気店なのに意外と行列ないな…と一瞬嬉しくなったのも束の間、店内には15人くらい並んで待っていて、なかなかの混み具合。
そのくらいのお客さんが店内で待てるほど、けっこうお店のスペースは広いです。客席は厨房を囲むようにカウンター席が10脚と、奥の方に4人掛けテーブル席が2卓。店内撮影禁止なので店内の画像は載せられませんが(料理の写真は撮ることができます)、カウンター席の間のスペースもゆったりとられていて、食べている時に肘が当たったりしません。清潔感のある割烹のような内装で、ゆったり気分良く食事できます。
麺屋猪一のラーメンは全品黒醤油と白醤油の2バージョン…出汁感を重視するなら白、醤油の風味を求めるなら黒がおすすめ
麺屋猪一のラーメンは、看板メニューの支那そばをはじめとする全6種類。それぞれに黒醤油と白醤油の2バージョンがあって、初めて来た人にとっては非常に頭を悩ませるところです。簡単に言うと出汁感を重視するなら白、醤油の風味を求めるなら黒でオーダーするのがおすすめです。
これに加えて、猪一はサイドメニューも普通のレベルを大きく超えているとの評判です。しばらくお店に通い詰めても、飽きがくることはなさそうですね。
麺屋猪一のラーメンメニュー(値段は税込)
- 支那そば 900円
- 鶏そば 950円
- 和牛そば 1200円
- 100%煮干し出汁そば(限定) 950円
- 炙り甘海老の出汁そば(限定) 1300円
- 九十九里浜産蛤 貝出汁そば(限定) 1400円
この日はすでに炙り甘海老の出汁そばが売り切れとのこと。限定ものに弱い僕は、ちょっと奮発して九十九里浜産蛤 貝出汁そば(白醤油)を注文することに。こちらもこれが最後の一杯ということで、ラッキーでした。他のメニューに使われている、最高級の鰹節数種類をブレンドして旨味を抽出した魚介出汁100%スープも捨てがたいですが、そちらは次の機会に…
九十九里浜産蛤 貝出汁ラーメン:九十九里浜産の肉厚ハマグリを使った猪一の最上級メニューは、日本蕎麦を想起させる新境地の和風ヌードル
それでは、この日にオーダーした猪一の最上級メニュー・貝出汁ラーメン(白)のご紹介です…
想像通り貝出汁でやや白濁したスープに、肉厚のハマグリが2つ。口を広げた貝殻がかなり大きく、ビジュアル的にインパクトがありますね。
まずはスープから…こちらは想像以上にハマグリの出汁がしっかり出ています。その出汁の風味と同じくらい自然な甘みがふわっと口から鼻に広がっていきます。
これに対する麺は、北海道産小麦を中心に数種類の銘柄をブレンドした自家製麺。細麺で角が立っていて、スープをあまり絡めず…ラーメンというより、蕎麦の食感に近いですね(実際、メニューがすべて「ラーメン」ではなく「そば」ですし…)。というか、器全体でラーメンの範疇を超えて、和風ヌードルとして新しいジャンルを開拓しているかのような印象も受けます。
画像では伝わりにくいですが、過去の記憶でも思い出すのが難しいくらい肉厚のハマグリ。身に弾力があって、噛めば中から貝出汁がじゅわ〜っと口の中に広がります。
とろろ昆布や粉山椒など味変アイテムも揃っていますが、僕個人的に気に入ったのは、ラーメンと一緒に出てくるすだち。半分食べたところですだちを絞ると、スープに柑橘系の爽やかな風味が加わるとともに、コントラストで元々の貝出汁の風味が際立つようになります。これはおすすめです。ぜひ一度お試しあれ!
和牛そば:和牛の旨味が全体を支配…あっさりだけど印象深い猪一の人気メニュー
こちらは2回目の訪店で注文した、和牛そば(黒、お値段1200円)。だいたい夜には売り切れている人気メニューなので、食べたい時には早めの時間の来店がおすすめです…
A5ランク和牛の薄切り肉をトッピングした、贅沢な一杯。早速和牛肉を食べてみると…
肉自体には、食べてはっきりわかるような濃い味付けはされていません。そのおかげで、和牛の脂が持つ甘みが後からじわじわやってきて、肉そのものの味を堪能できるようになっています。
続いてスープを一口…たまり醤油を使っているので、見た目は濃そうですが、味は結構さっぱりです。鰹節の風味もしっかり効いているのですが、程よいところでサーっと引いていき、後味残さず喉を通り過ぎていきます。
そのスープ、後半戦になると和牛の脂がスープにしみ出して、肉の甘味がプラスされた別の旨味を味わえます。和牛を焦って食べ終えず、スープの味の変化も楽しんでもらえれば…と思います。
麺は相変わらずの角がキリッと立った細麺。ツルツルいけて喉越しが良いのはもちろんですが、麺の角が口唇や舌に当たると、角の触感が刺激になって頭の中もシャキッとするような気がします。ラーメンでこの感覚を味わえるのは、今のところ僕が知っている限り猪一さんだけです。
炙り甘海老出汁そば:稲庭うどんを連想させる繊細で透明感のある出汁と細麺の組み合わせ…一気にすするのではなくじっくりと味わいたい一杯
まだまだ続く、猪一限定メニューのご紹介。3つめは炙り甘海老出汁そば(白、お値段 1300円)…
中央に炙った甘海老が3尾トッピング。甘海老自体の小ささに反して、やけに存在感が大きく感じます。
まずはスープを一口…見た目通り透明感があって、ほんのり甘味があり、最後に微かに海老の風味が感じられます。猪一さんなのである程度想像できましたが、その想像を超える繊細さです。
そしてこのスープに、いつもの角が立った細麺が本当によく合うんです。味わいは違いますが、稲庭うどんにイメージが近くて…ちょっと力を入れると簡単に壊れてしまいそうな感じ。一気にズルズルいってしまうより、じっくり味わいながら食べ進めるのがおすすめです。
強いて言えば、このラーメンで香りの強いのは炙った甘海老くらい。スープも麺も上品だからこそ、海老を炙った香ばしさが際立ちます。熱の通り具合も絶妙で、固くなりすぎずしっとりした食感も残っています。
100%煮干し出汁そば:鳥取県境港産の煮干しを使った出汁は、しっかりした出汁感ながらえぐみが一切ないスッキリした味
そして最後の限定メニュー、100%煮干し出汁そば(白 お値段 950円)。鳥取県境港産の煮干しの出汁をしっかり味わうために白を選んだのですが…
この煮干し出汁そばのスープもすごいです。しっかりと煮干しの出汁が出ているにもかかわらず、煮干し特有のえぐみが一切ありません。甘さもあって、白醤油の塩分がほんのり感じられて、そして後味残さずサッと消えていく感じ。煮干そば藍の鶏油でコクを出した煮干そばも良いですが、僕は猪一の煮干そばの方が好みですね。
麺については、もう繰り返す必要はないでしょう。加えてシャキシャキの細ネギ、しっかり味のしみたメンマ、そしてもち豚のチャーシューが1枚入っています。このチャーシューももちもちして肉感があって美味なのですが、きっとチャーシューがない素の状態でも十分に満足できると思います。
以上4杯で、猪一の限定メニュー全制覇!もう、通常メニューの支那そばや鶏そばもまずいはずがないことは、十分にわかりました。機会があればこれらの通常メニューもレポートしようと思いますが、ラーメンについては一旦この辺で区切りをいれますね。
猪一はサイドメニューもハイレベル…ラーメンの後に〆のご飯はいかがですか?
さて、麺屋猪一はラーメンだけでなくサイドメニューもハイレベルなことで知られています。正直、一般のラーメン屋と比べて値段は高めです。でも、普通に居酒屋ではこれくらいの値段はすると思うので、同じ値段で質の高いものが食べられると思えば、この値段も安いものじゃないでしょうか…
赤玉 生卵かけご飯:新鮮な卵の旨味を最大限に引き出すには、自家製だれを3周回しがけで…
まず最初にご紹介するサイドメニューが、農林水産大臣賞受賞の卵を使った「赤玉 生卵かけご飯(お値段 350円)」…
茶碗一杯のご飯の中央に落とし卵と少量の刻みネギを添えただけの、シンプルな1品。「醤油を3周くらい回しかけして食べてください」との店員さんの言葉通りに、生卵をかき混ぜて、自家製だれを3周回しがけしていただきます。
卵の新鮮さは文句なく、食後の胃袋にも抵抗なくサラサラと収まっていきます。自家製だれは土佐醤油のように出汁が添加されているのか?と思いきや、ちょっと舐めてみるとやや薄口で雑味のない醤油味でした。
確かに、3周回しがけくらいが最も卵のコクと旨味を引き立てる気がします。人それぞれ味の好みは分かれますが、これより多目にたれをかけてしまうと醤油のしょっぱさが前面に出てくるようになってしまいます。
炙り帆立と豆腐のだしマヨ丼:温度も味も食感も色々な刺激が楽しめる、猪一でおそらく唯一のピリ辛サイドメニュー
続いてご紹介するのが、北海道産の帆立を使った「炙り帆立と豆腐のだしマヨ丼(お値段 500円)」…
中央に鎮座した炙り帆立を取り囲むように存在するおぼろ状の豆腐。刻みネギの緑と刻み海苔の黒、そして回しがけされたラー油の赤と、色彩的にも鮮やかです。
温かい白ご飯と冷たいおぼろ豆腐の温度のコントラスト…全体的にはお出汁のかかった和風の味がするのですが、そこにラー油の香ばしさとピリッとした辛さが加わります。さらに炙り帆立の香りやパリッとした海苔の食感も相まって、いろいろな刺激が味わえる興味深い一杯になっています。
焼売:大きな身の中に豚肉がぎっしり詰まって食べ応えあり…タケノコのシャキシャキ感も心地よい
猪一さんのサイドメニューについてもご紹介しておきましょう。こちらは和牛そばと一緒にオーダーした自家製焼売(お値段 600円)…
サイドメニューとしてはやや高額ですが、焼売1つ1つはゴルフボールを超える大きさがあって、箸で持ち上げるのが難しいくらい。中を割ってみると、ぎっしり詰まって豚肉のほかにタケノコと椎茸のみじん切りが顔を出しました。
一応醤油と辛子が出てきますが、あらかじめ醤油とみりん(?)で下味がついているので、何もつけずにそのまま口に入れてみてください。ほのかな甘みと椎茸の風味、そしてタケノコのシャキッとした食感がそれぞれ自己主張をして、味覚・嗅覚・触感を一斉に刺激して楽しませてくれます。
本店とはメニューが違う麺屋猪一 離れも同時にミシュランのビブグルマンを獲得
この本店から徒歩6分、高辻通りを西に向かったところに、麺屋猪一の2店舗目「麺屋猪一 離れ」があります。支店とは言っても、メニューは本店とは違います。「離れ」では、より鰹節と鯖節の出汁にこだわったスープを提供しており、本店の技を踏襲しつつも違った味を追求しているお店です。
そんな「離れ」ですが、こちらも本店と同じくミシュランのビブグルマンを獲得しています。2店舗同時にミシュラン獲得という偉業は、おそらく全国的にもなかなか例を見ないのではないでしょうか。
京都で最も蕎麦に近いラーメン…麺屋猪一へのアクセスは、最寄り駅の阪急京都線・京都河原町駅から徒歩5分
それでは、お店の詳細です。店舗データはこちら…
P.S. 京都で美味しいラーメンをお探しのあなた、ぜひこちらの記事にも立ち寄ってみてください…
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