京都名物の1つに「にしんそば」というものがあります。にしんそばとは、かけ蕎麦の上に身欠きにしんの甘露煮を乗せたもの。物流が整っていなかった時代に、京都では貴重な海産物であった身欠きにしんを蕎麦の具材にしようとしたのが始まりだとか。
このにしんそばを、京都でもっとも伝統のある蕎麦屋で食べてみませんか?というのが、今回のご提案。何せ、この記事でご紹介するお店は「応仁の乱」の前から京都で商いをしていたのですから、その歴史と伝統はハンパなものではありません…
本家尾張屋 本店|創業550年以上の京都で最も伝統のある老舗…ここの蕎麦は宝を集める縁起物
お店のホームページによると、本家尾張屋は京都で商売を始めて、なんと創業550年以上!1465年に、尾張の国から菓子職人が京都にやって来て商売を始めたのが、本家尾張屋の始まりのようです。それ以来ずっと菓子屋として営業を続けてきた尾張屋に、大きな転機が訪れたのは江戸時代中期頃。京都の禅寺で蕎麦切りが食されるようになり、そのうち寺で賄いきれなくなった注文を引き受けるようになったとのことです。このような歴史のある本家尾張屋は、少なくとも京都では最も古い歴史と伝統を持つ蕎麦屋と言っても過言ではないでしょう。
その本家尾張屋ですが、烏丸通の一本東側の車屋町通沿いに古風な佇まいで営業しています。歴史を感じさせる門構えと、暖簾の中央に描かれた「寶」の一文字。かつて蕎麦は宝を集める縁起の良い食べ物とされていて、別名「宝来」と呼ばれていたそうです。そのおめでたい「宝」の旧漢字を店のシンボルにしているところから、お店のそばに対する強い思い入れが感じられます。
その暖簾をくぐって店内へ…客席は主に2階にあるようで、そのまま2階へ案内されました。外からうかがい知る以上に店内は広そうで、京都の建物らしくかなり複雑な構造をしています。坪庭を拝めたりもするので、時間的な余裕があれば店内を散策してもいいかもしれません。
にしんそば:素朴なかけそばに一本の身欠きニシンで昔の時代のささやかな贅沢を演出
それでは早速今回のターゲット、にしんそば(お値段 1242円)をご紹介しましょう。蕎麦と出汁のみのシンプルなかけそばの中から、にしんの身が一本だけ外に向かって突き出ています…
僕が座っている席の数メートル前から、上質な出汁の香りが漂ってきます。利尻昆布と目近(宗太鰹)、うるめ、鯖節でとった出汁は、口に含むと優しい甘さを感じて、後味を残さずスーッと引いていきます。この上品な味を支えているのが京都の豊富な地下水。なんでも、京都を流れる地下水の総量は、琵琶湖の水の総量にも匹敵するそうですね。本家尾張屋でも、出汁取り、蕎麦打ちなどにこの地下水を使っているとのこと。早起亭うどん同様に、本家尾張屋の味の秘密をたどると京都の地下水に行き着きそうです。
一方の蕎麦には、北海道・音威子府の契約業者から仕入れた蕎麦粉を使用。毎日挽きたての蕎麦粉を使って打った蕎麦は、細切りですが香り豊かでコシがあり、ツルツルと喉越しも良好です。
そして、丼を横切るほど長い身欠きニシン。身が真っ黒になるまで煮詰めてあるにもかかわらず、味付けはほんのり甘い程度。身は箸でつまめば軽くほぐれるので食べやすいです。何となくですが、物資が十分でない時代のささやかな贅沢というか…このにしんが昭和の時代のラーメンにおける1枚のチャーシューのような存在に思えて、個人的には風情を感じずにはいられません。
美味い蕎麦を打つため地下水には並々ならぬこだわり…本家尾張屋本店へのアクセスは、最寄り駅の京都市営地下鉄・烏丸御池駅から徒歩2分
本家尾張屋は、今回ご紹介した本店の他に高島屋店、四条店の合計3店舗を構えているのですが、この3店舗ともに水には並々ならぬこだわりを持っていて…というのは、先代の15代稲岡伝左衛門が支店を出す条件として「本店の地下水と変わらない水質でおだしを提供できること」を挙げたからだそうです。
裏を返せば、この3店舗のどこで何を食べても、本店と全く同じ品質で蕎麦を食べられるということでもあります。本店まで行く時間のない方も、安心してアクセスしやすい高島屋店、四条店をご利用ください。
それでは、お店の詳細です。店舗データはこちら…
本家 尾張屋 本店 (そば(蕎麦) / 烏丸御池駅、丸太町駅(京都市営)、京都市役所前駅)
昼総合点★★★★☆ 4.5
住所:〒604-0841 京都府京都市中京区仁王門突抜町322
電話番号:075-231-3446
営業時間:11:00-18:00 LO
定休日:1月1日、1月2日のみ
駐車場:なし
クレジットカード払い:可
P.S. こちらも京都では老舗のお店。ミニ京懐石ランチがお得な値段で食べられますよ…
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