宮島って困ったことに、夜になるとほとんどのお店が閉まってしまうんですよね。なので、「お腹空いたから夜ご飯を食べに行こうか…」とか「どこかで軽く一杯…」と思い立っても、なかなか希望通りのお店が見つからなかったりします。僕も事前にネットリサーチをしましたが、僕が調べた限りでも本当に片手で数えられるくらいしか夜営業のお店がなかったですし…
そんな数少ない夜営業のお店の中で、今回僕が選んだのが宮島鮨 天扇(てんせん)というお店。現時点で宮島で唯一のお寿司屋さんですが、2018年にミシュランに掲載されたことがある実力店でもあるんです…
実は二代続く歴史のあるお寿司屋さん…宮島鮨 天扇はこんなお店
宮島鮨 天扇は2017年にオープンした宮島では比較的新しいお店ですが、元々は宮島ではなく広島市五日市で先代のご主人がやっていたお店のようです。現在のご主人は二代目で、先代の店を引き継いだ後に今の場所にお店を移転。その翌年にミシュランガイドに掲載されて以降、県外の観光客や外国人にもその名を知られる人気店になっています。
お店があるのは町屋通りの北の端近くで、夜になるとグッと暗くなる物静かなエリアに隠れ家的に佇んでいます。その入り口にはメニューと共に…
ミシュランやトリップアドバイザーの受賞盾が飾られていて、世界に認められた実力の証を通りかかった人にアピールしています。
店内は白を基調とした落ち着いた雰囲気の内装になっていて、今のお店が新しいのもあって、歴史ある寿司屋にありがちな厳かな雰囲気はありません。客席は食べログ情報でカウンター席を含む21席。カウンター内の二代目ご主人も物腰柔らかい印象の人なので、寿司職人に対して恐いイメージを持っている人でも安心して利用できると思いますよ。
ミシュラン掲載店・宮島鮨 天扇の夜のおまかせコース、中身は豪華なネタのオンパレードだった
それでは、ミシュラン掲載店・宮島鮨 天扇の最上級メニュー・夜のおまかせコース(お値段 税込17,000円)をこれからご紹介しましょう。でも、あらかじめお断りしておきますが、今回食レポあまり期待しないでください。記事を読んでくれるあなたの役に立つ情報を届けるのも大切ですが、せっかく高級店に来たのだから、まずは自分が楽しまないといけません。それに実を言うと、今回1つ大チョンボがありますし…
お通し:名残り鱧の湯引き
まずはお通しとしての名残り鱧の湯引き。鱧って夏が旬と言われていますが、実はもう一度美味しい時期がやってくるって知ってました?産卵で一旦痩せた後、食欲旺盛になって脂が乗ってくる晩秋が2度目の旬と言われていて、これを名残り鱧あるいは落ち鱧と言うんだそうな。確かにそう言われると、皮と身の間にある脂は夏の鱧と比べて…いやぁ〜、勉強になりますなぁ…
お造り盛り合わせ
続いて出てきたのたお造りの盛り合わせ。左上から右下に向かってミル貝、鯛、本マグロ、オコゼ、締め鯖の順に並んでいます。味付けは醤油とポン酢の2種類。鮮度と味は言わずもがな…ですよね。
牡蠣汁
3品目は広島らしく、牡蠣の汁物が出てきました。この牡蠣汁が素晴らしくて…牡蠣の旨味だけがお出汁にぎゅっと詰まっていて、とっても滋味深い味になっています。えぐみは微塵も感じられないし、中には大きくてプルプルの牡蠣が1粒。これだけで日本酒2〜3号いけちゃいそうな「呑める」汁物です。
白甘鯛の焼き物
4品目は愛媛産の白甘鯛を使った焼き物。あんかけにカニの身が入っていたり、自家製カラスミや金箔が添えられていたりと見た目に豪華なのですが、一番のポイントは皮目の焼き加減。鱗がピシッと立ってパリパリになっていて、箸を入れると「パリパリッ」と周りにも聞こえる気持ちの良い音が…この鱗が割れる音が口の中でも楽しめて、身の旨味だけでなく音も心地よい刺激として記憶にずっと残り続けます。
茶碗蒸し
5品目に出てきたのは茶碗蒸し。これも出汁感がすごくて、口の中に入れた瞬間すべてが出汁に姿を変えて喉元を通り過ぎていく感じ。そんなすごく上品な茶碗蒸しなのですが、茶碗の底に梅と紫蘇を混ぜたペーストが潜んでいて、上品な出汁の余韻に浸っていた脳みそを最後にシャキッと覚醒させるというギミックが隠されています。
アコウ
そして、ここから握りがスタート。握りの1品目に出されたのが、別名キジハタと呼ばれる高級魚・アコウ。プリプリした身の食感があって、味はクセがなく淡白ですが、その中にほんのりとした甘味を感じます。
本鮪のカマトロ
握りの2品目は青森県産本鮪。カマ下の霜降りの部分をネタにしています。見た目通り脂がものすごいんですが、口の中でとろける感じではなく、身の歯応えもしっかりと感じられます。
カワハギ
握りの3品目はカワハギ。身は淡白でクセがなく、独特な歯応えが楽しめる…と思いきや、身の下に肝と薄皮が潜んでいて、少し遅れて肝の濃厚な味わいが口の中に広がっていきます。
車海老
握りの4品目は車海老。シュッと細長くて、見た目にすごく綺麗ですよね。身の旨味や甘味が濃厚なのはもちろんですが、熱の通し加減も絶妙で、海老独特の歯応えも思う存分堪能できます。
サヨリ
握りの5品目はサヨリ。半透明な銀色の身は柔らかく、他の魚とは違う独特な食感があります。味も基本淡白で控えめですが、噛み締めるごとにじわ〜っと味が滲み出てきます。
コハダ
握りの6品目は佐賀県有明産のコハダ。これまでの料理にうっとりしすぎて、ここで寿司の画像を残し忘れるという大チョンボ!これ、後で画像を整理していて見つけた時に、ものすごいショックを受けるんですよねぇ…せっかくここまで読んでくれたのに、本当に申し訳ありませんm(_ _)m。さて、肝心の味の方は、塩や酢が他店と比べても控えめで、その分本来の身の旨味と歯応え、香りが楽しめる感じでした。
蒸し鮑
握りの7品目は蒸し鮑。コリコリした感じではなく、弾力があってプリプリした食感になっていました。上に鮑の肝がトッピングされていて、濃いめの醤油と共に濃厚な旨味を楽しめます。
ノドグロ
握りの8品目は島根県産のノドグロ。上の画像をよく見ると、包丁の入った断面が脂でテカテカ光っています。見た目に脂のノリがものすごいことがわかりますよね。口に放り込むと、軽く炙られた皮目からは鼻に向かって焦げた香ばしさが漂う一方、身の方からは旨味を持った脂がこれでもかっ!というほどドバドバ出てきます。
穴子
握りの9品目は、宮島といえばやっぱりこれ!の穴子。1貫を半分にカットしてくれて、藻塩とつめ醤油の2つの味で楽しめます。身がふかふかで柔らかいのはもちろんのこと、藻塩が振られた方のアナゴは驚くほどの甘味が引き出されていました。
広島牛のミスジ
ゴールが目の前になってきた握りの10品目は、広島牛のミスジ。肩甲骨の裏にある希少部位ですね。脂と赤身のバランスが良く、柔らかい肉の歯応えと、しつこくならない程度に濃厚な脂の旨味が同時に楽しめます。
赤うに
握りの11品目は、山口県産の赤うに。ご主人曰く、瀬戸内海産ではこれが今年最後の赤うにだそうです。海苔の巻き方が独特ですね。味付けは塩だけで。ねっとりとして濃厚な旨味と甘味は、やはり高級寿司店でしか楽しめない驚異的なレベルでした。
玉
握りの最後は玉。ふわっと柔らかく、自然な甘味のある玉子焼き。これまでの豪華なネタの数々からの玉子焼きは、コースの終わりが近づいてきた寂しさを感じさせますね。
巻物
と思っていたら、巻物で本鮪の大トロが出てきました。最後の花火みたいなものでしょうか。
それにしても、トロと一緒に巻かれている緑のものは何でしょうか?実はこれ、すりおろす前のわさびなんです。「えっ、こんなにわさびをたくさん入れたら、辛くて食べられないんじゃないの?」と思いませんか?でも、わさび独特の香りはあるものの、全然辛くないんです。驚きでした。わさびって、おろさないと辛くならないらしいんです。そういえば、そんなことをどこかで前に聞いたことがあるかも…でも、実体験としては今回が初めて。いやいや、勉強になりますなぁ。
蜂蜜入り厚焼き玉子
そしてこれが本当にコースの最後、宮島産蜂蜜入りの厚焼き玉子。先ほどの玉子焼きとは違ってギュッと旨味を詰め込んだような食感で、蜂蜜の甘さと濃厚な卵の旨味がデザートとしての役割を十分に果たしています。
こんな感じの宮島鮨 天扇の夜のおまかせコース、穴子や牡蠣を含めて地元の食材を十分に堪能できるし、個人的にも十分満足できました。全体的な印象としては、最上級メニューらしく豪華なネタが目白押しで、ネタの持つ力を信じて味付けや細工は最小限といった感じでした。その一方でシャリの握り加減はすごく印象的で、手に持って崩れず、口の中ではふわっとしていて、口の動きに合わせてほろっと優しく崩れていく、まさに職人技と呼べる力加減。このシャリの握り加減は、寿司好きの人なら一度は体験しておく方がいいんじゃないか…と思います。
気になるお会計は飲み物を含めて2万円弱。お値段も都心部の寿司屋と比べてずっとリーズナブルなだけじゃなく、何よりお店のサイトや店頭にしっかり金額が明記されていて、安心して自分の望んだ分だけ食べられるのが嬉しいです。
宮島の中にここ1軒しかお寿司屋さんがないという事実を傍においても、このお店は僕も自信を持ってあなたにおすすめできます。JR広島駅から1時間くらいで行けるし、もしかしたら広島市内から食べに行くのもありかもしれませんね。でも、夜にお店でゆっくりしすぎると帰れなくなってしまう危険性があるので、くれぐれも帰りのフェリーの時間にはご注意を…
ランチタイムはもっとリーズナブルに…宮島鮨 天扇へのアクセスはJR西日本フェリー(宮島松大汽船)・宮島桟橋から徒歩5分
こんな感じの宮島鮨 天扇はランチ営業もやっています。ランチタイムにはおまかせコースが12,500円(税込、事前予約要)と、さらにリーズナブルに。高級鮨を楽しむためのハードルがグッと低くなります。せっかく観光するのだから、地元の美味しいものを食べて、いい思い出をつくって帰りませんか?特に週末は混雑が予想されるので、事前にネット予約しておくのがおすすめです。下に予約用ボタンを貼っておくので、よかったら使ってみてください。
それでは、お店の詳細です。店舗データはこちら…
P.S. これから宮島への観光を考えているあなた、ぜひこちらの記事にも立ち寄っていってください…
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