京都の五条坂周辺には、かつて京都の伝統工芸品である清水焼の工房が軒を連ねた場所でした。しかし、大量生産による低価格化や後継者不足などに悩まされ続けた窯元は、時代の流れに逆らえずに廃業に追い込まれ、あるいはその地を離れなければならなくなりました。
そうして残された取り壊し寸前の工房を祖父から孫が譲り受け、改修後2015年11月にオープンしたのが今回ご紹介する市川屋珈琲。築200年の京町家の雰囲気をそのまま残したレトロなお店の情報がSNSを通じて拡散され、町家カフェ好き女子を中心に連日行列ができています…
重厚な町家造りに多様な客席…いつ誰と来ても落ち着ける空間がそこにある
その市川屋珈琲に、ある平日の開店15分前くらいに到着。すでに店頭には女性3人が並んでいて、その後も続々と若い女性中心にお客さんがやって来ます。やはり女子率は相当高めですね。でも、男1人だろうと子供連れだろうと全然気にする必要ありません。築200年の京町家が放つ重厚な雰囲気が、そんな細かい心配をあっさり一蹴してくれます。
実際、店内にも様々なお客さんが楽しめるような工夫がされています。その最たる例が客席。店内に客席は全部で25席あるのですが、座る場所によってガラッと雰囲気が変わるんです。
坪庭を眺めながらコーヒーをすするカウンター席や、窓越しに外を眺めながらぼんやり過ごすカウンター席、ちょっと照明を落として静かに過ごすテーブル席、吹き抜けになって開放感のある席、一番奥まったところでゆっくりくつろぐソファー席…どの席に当たるかは当日の巡り合わせ次第ですが、いつ誰と来ても優雅な喫茶タイムを過ごせるような環境が市川屋珈琲には整っているように感じます。
デミオムライス:市川屋珈琲のメニューで唯一のご飯もの、京都では珍しく…
この日の僕がオーダーしたのは3品。まずは市川屋珈琲の二大人気メニューの1つ、かつ唯一のご飯もの・デミオムライス(お値段 税込800円)で、空腹を和らげにいきます…
大皿の中心を貫くように横たわった黄色の卵とじに、褐色のデミグラスソースがなみなみとかかっています。サイズはやや小ぶりで、この一皿でお腹を満たすほどのボリュームはありませんが、逆にそのほうが他のメニューを楽しめるので都合が良いかもしれません。
では、実食…デミグラスソースは、京都では珍しくやや塩分が強めの味つけ。まったりとして濃厚なコクがあって、最後にちょっとだけ苦味がやってきます。ライスを包む卵はやや厚めで、外目はしっかり熱が通って殻としての役割を果たす一方、内側は半熟状態でとろとろ食感を楽しめるようになっています。
これをフライパンで炒めたパラパラライスと一緒に口に放り込むと、まったりデミグラスソースと半熟卵が一体となって舌の上を気持ちよく刺激するのと同時に、口から鼻へ向かって微かなバターの香りが漂ってきます。お値段も妥当だし、これが人気メニューになるのがよくわかります。
一方、塩分がビミョーに強めなのと、量的にも若干少なめなことで、オムライスを食べ切っても他のメニューを追加注文をしたくなるんですよね。この辺の匙加減が(悪い意味ではなく)すごく上手いな…という気もします。
季節のフルーツサンド:フルーツも変われば切り口も変わる…インスタ映え必至の一期一会メニュー
というわけで、オムライスの後に市川屋珈琲のもう1つの人気メニュー・季節のフルーツサンド(お値段 1130円)を注文。これにコーヒーをセットで注文すると、珈琲代が470円→350円とかなりお得になります…
この日のフルーツサンドはいちじく+バナナ、あるいはシャインマスカット+ピオーネの2種類から選択。前にオソラカフェでシャインマスカットのフルーツトーストを食べたこともあり、この日はいちじく+バナナを選びました。
フルーツサンドって材料でほぼ味が決まるので、お店のオリジナリティを出すのが難しいメニューだと思うんです。そこを市川屋珈琲ではカットの仕方を研究して、ビジュアル面でアピールすることに成功。これがSNSで拡散した大きな理由の1つですね。季節ごとにフルーツが変わるだけじゃなく、切り方も変わっていくようなので、その日出会ったフルーツサンドには二度と出会うことはないかもしれません。
フルーツの隙間を埋めるように、ホイップクリームが結構な量入っているのですが、甘さも脂肪分も控えめなので意外とあっさりいけちゃいます。デミオムライスで軽く刺激された味覚を落ち着けるのにも最適な気がします。
市川屋ブレンド:2杯目が欲しくなる絶妙な味加減…清水焼のコーヒーカップにも要注目
一方、市川屋珈琲で注文できるコーヒーは…
- 市川屋ブレンド(軽めのあっさりタイプ) 470円
- 青磁ブレンド(軽い酸味のあるタイプ) 470円
- 馬町ブレンド(重厚な苦味のある深煎りタイプ) 500円
の3種類があり、この日はご主人イチオシの市川屋ブレンドを選択しました。
その市川屋ブレンドですが、僕が想像していたよりも軽めで飲みやすいコーヒーです。5点満点で苦味が2〜3、酸味が0って感じ。強いコーヒーが苦手な人でも、ブラックでスイスイいけちゃうくらいの軽さです。これもまた2杯目をおかわりしたくなる絶妙な味加減で、市川屋珈琲は全メニューを通じてこのあたりの設定がすごく上手だなぁ…と感じます。
でも、それ以上に僕が感銘を受けたのがコーヒーカップ。この薄い青色のカップ、とても綺麗じゃないですか?これ、ご主人の家で焼いてもらった清水焼のカップなんです。こんなカップを使って毎朝コーヒーを飲めたら、もっと毎日を気持ちよく過ごせそうじゃないですか?これを機会に、僕も自宅に陶磁器を揃えてみたくなりました。
テイクアウトにも対応!市川屋珈琲へのアクセスは、最寄り駅の京阪電鉄・清水五条駅から徒歩9分
さて、今回ご紹介した市川屋珈琲のデミオムライスと季節のフルーツサンド、テイクアウトにも対応しています。天気の良い日にはテイクアウトにして、近くの鴨川でのんびり過ごす…なんて使い方も良いかもしれません。
それでは、お店の詳細です。店舗データはこちら…
JR京都駅からであれば、京都市営バス206番系統北大路バスターミナル行きに乗り、馬町バス停下車が便利です。
P.S. 市川屋珈琲のご主人は、独立する前はこちらの老舗喫茶店でずっと修行をしていたそうな…
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