ある時仕事をしていて、ふと一年前に行った店に寄りたくなりました。まだまだ寒いし、鍋でも食べたいな…と思いながら、仕事が終わる頃に予約の電話。お店にとっては忙しい時間帯にも関わらず、「全然大丈夫ですよ!」との店主のあたたかい声に気を良くして、大阪の北新地にあるそのお店に向かったのでした…
活地鶏料理ひないや|厳選された鶏肉と安心安全の食材を提供する大阪・北新地の比内地鶏専門店
そのお店の名前は「活地鶏料理 ひないや」と言います。「ひない」という単語から連想されるように、比内地鶏の専門店です。比内地鶏と言えば秋田。秋田と言えばきりたんぽ。そうです。この日僕が食べたかったのは、比内地鶏を使ったきりたんぽ鍋だったのです。
あいにく、きりたんぽ鍋は前日までの予約が必要とのことで叶いませんでしたが、代わりに注文したのが比内地鶏を使った親子丼(1500円)。こちらもずっと気になっていたのです。とことん厳選された食材で作った親子丼、一体どんな味がするのでしょうか…
大堀「親子丼をください。」
店員「浸水から始めるんで、お時間1時間半くらいかかります。」
大堀「はい?」
なんと、注文を受けてお米を水に浸けるところから始めるんだそうです。なんというこだわり方…それとも、単に廃棄物を出さないための営業的な理由?世間では気軽に食べられている、決して高級メニューとは言えない親子丼。それに90分もかけて作る必要が一体どこにあるのでしょうか?
というわけで、本当はササっと食事を済ませて早く帰ろうと考えていた僕のプランはもろくも崩れ去っていきました。でも、こうなったらとことん付き合いましょう。90分後の親子丼を待つ間に、生ビールを飲みながら他のメニューをオーダーすることにしました。
このお店のメニューはけっこう分厚いのですが、居酒屋のようにそんなに多くの料理が注文できるわけではありません。実は、その分厚いメニューの半分くらいが、ひないやへの食材提供者の顔写真つき情報なのです。たった1つのある食材を除いて、すべての仕入れ先がこのリストに載っています。美味しさだけでなく安心安全も届けようという、お店の理念がよくわかりますね(ちなみに、情報を載せていないたった1つの食材が何なのかは、この記事のどこかに書いてあります)。
それでは、親子丼が出てくる前に注文したもののいくつかをご紹介しましょう…
比内地鶏の焼き鳥:鶏の臭みは全くなし!肉の旨味と脂が凝縮した希少部位3本
ひないやの焼き鳥は、どれも1本600円前後とかなり高めです。大衆的居酒屋の焼き鳥と比較して5倍程度の値段がします。でも、それに尻込みしていたら最高級食材の焼き鳥は味わえません。「今日だけは!」と覚悟を決めて、特に食べるのが難しそうな部位を中心に3種類オーダーします。
注文した3本のうち、真っ先に出てきたのがこのレバー…
本当に、注文してから数分で出てきました。生焼けでは?と一瞬疑ったあなた、ご安心を。備長炭で焼いた比内地鶏のレバーは中までしっかり熱が通っています。そして火を通しすぎないからこそ、中まで柔らかくトロッとした食感が保てます。この柔らかさと旨味は、高級フランス料理店で出されるフォアグラに匹敵しますね。
続いて焼きあがったのがハラミ…
このハラミ、串1本の量を取るのに4〜5羽の鶏がいるそうです。画像を見てもおわかりのように、絶えず串全体からジュワーっと脂があふれてきます。その脂もさることながら、肉は肉で旨味が凝縮されており、比内地鶏の美味さがこの一本でわかるといっても過言ではありません。
そして3本目のぼんじり…
これも希少部位。1串作るのに数羽の鶏が必要です。にんにく粒に似た形のお肉は、表面はパリッと焼かれ、中は筋肉と脂のバランスが絶妙です。
比内地鶏ももの一枚焼き:この焼き方が出来るのは日本広しと言えども…
続いてご紹介するのが、比内地鶏もも肉の一枚焼き(100gで1300円)。もも肉1枚を串で刺して、備長炭でじっくり焼き上げます。通常1枚が350g程度とのことで、1人で食べるには多すぎるので、ハーフサイズにして注文しました。
この項目の見出しにある「この焼き方が出来るのは日本広しと言えども…」というのは、ひないやのメニューに書いてあった文言なのですが、その自信も一度食べたらうなずけます。皮がパリッとしているのはもちろんですが、中の肉がギュッと締まって弾力があるんです(熱が通りすぎて硬くなっているのとは違います)。
皮から出た脂が肉をしっとりさせ、さらにその脂が皿にかかった塩を吸って絶妙なソースへと昇華します。そのソースと一緒に食べたもも肉は…あとは実際あなた自身で体験してみてください。
注文から完成まで90分かかる比内地鶏の親子丼:他店の親子丼とはどこが違う?
そんなこんなで1時間半が経過。本当に注文から90分経って、待望の親子丼が完成しました。
この間、厨房で何がされていたかというと…お米を軽量して水に浸け、しばらく経ってから1人前用の釜で炊きはじめて…という感じです。ご飯の炊き上がりに合わせて卵が3つ割られ、出汁とともに鶏肉が鍋で火にかけれらました。鶏肉に火が通ったところで溶き卵投入。最後におひつに移されたご飯の上に具材をかけて出来上がりです。
画像を見ておわかりのように、半熟卵でトロトロの状態の親子丼。だけど、それにしてもやけにテカテカ光っている感じがしません?これ、比内地鶏のコラーゲンです。
ご飯は一粒一粒がシャキッと立って、モチっとした食感に炊きあがっています。さすがに釜で炊いた炊きたてなだけあります。これに半熟状態でトロトロの卵に、弾力のある鶏もも肉…これが不味いわけないですよね。
でも、話はここで終わりません。温かい親子丼も、時間とともに卵は熱が通って硬くなっていく一方、丼全体としては冷めていきます。こうなると、通常は親子丼の味も半減なのですが…
ここで再登場するのが、比内地鶏のコラーゲン。丼が冷めてくると、液状だったコラーゲンが次第にトロトロ、そしてプルプルの状態へと変わっていくんです。この状態でご飯をレンゲですくったら、レンゲの下でコラーゲンが糸を引いているはずです。
つまり、親子丼が冷めてきたときに、卵に変わってコラーゲンがトロトロの状態を作ってくれるんです。こんな状態、誰が事前に予想できるでしょうか?
これだけコラーゲンがたっぷり入っているなら、きっと美容効果もすごいんでしょうね…女性にアピールしたら大ヒットになるかもしれません。
比内地鶏のきりたんぽ鍋:比内地鶏とごぼう、舞茸、セリ…シメの稲庭うどんで秋田の味を満喫
親子丼を食べてから約1週間…前日に予約して、きりたんぽ鍋を食べるために出直してきました。3月とは言えこの日もまだまだ肌寒く、鍋をつつくにはなかなか良い天候となりました。
ひないやでは、事前に予約をすれば1人前でも鍋を用意してくれます。北新地でお一人様鍋って、すごく贅沢じゃないですか?このブログのコンセプトにピッタリです。
それはさておき、こちらがお目当のきりたんぽ鍋 3000円/人…
比内地鶏とごぼうでとった醤油だしに、きりたんぽ、鶏肉、モツ、こんにゃく、ネギ、舞茸、セリ…だしに雑味がなく、とってもクリアで繊細な味です。このだしをしっかり吸ったきりたんぽも、だしの元になっている地鶏肉も、終始優しく口から胃へと通過していきます。やっぱりこの鍋は、みんなでドカドカつつくより、1人でゆっくり味わいたいですな…
鍋の中身がなくなったところで、シメの稲庭うどんを追加投入…
鍋のシメで定番と言えば雑炊ですが、この鍋に雑炊は正直もったいないです。せっかくの澄みきっただしの味が、ご飯や卵の味で変わってしまいます。自宅ならそれもありですが、せっかく高級店でしっとり繊細な料理を味わったのですから、最後までそのままでいきたいものです。
稲庭うどんなら、その大役を見事に果たせます。日本三大うどんの1つに数えられ、讃岐うどんとは対極的に細麺でおしとやかな稲庭うどん。クリアで繊細なだしに見事に溶け込んで、至福の時を上品かつ後を汚さずにしめてくれます。
ここの比内地鶏がダメなら、もう鶏料理は諦めた方がいいかも…活地鶏料理 ひないやへは、JR大阪駅(大阪メトロ梅田駅)から徒歩7分
それでは、お店の詳細です。
大阪駅から地下道を通って南へ向かい、JR北新地駅の1123番出口を出てすぐのビルの6階に店舗があります。1階にコンビニがあるのが目印です。
それでは、このお店がたった1つ秘密にしている食材を明かしましょう。それは「塩」です。これだけは企業秘密とのこと。探し出すのに相当苦労したようです。
実際ひないやの料理は、焼き鳥をはじめ塩だけで味付けしたものが多いです。この「秘密の塩」が、ひないやの味を作っていると言っても過言ではないでしょう。
P.S. 大阪で美味しい和食をお探しのあなた、ぜひこちらの記事にも立ち寄っていってください…
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