世の中わからないものですね…
デザイナーとして活躍していたある男性。行きつけにしていた大衆的な中華料理店でマスターと親しくなったとか。そのうち店の手伝いをするようになり、さらに調理を任されるようになって、気がついたら自分の中華料理店を持つようになっていた…
そんな感じで開店した中華料理店が、創業から40年以上経った今、京都の四川料理の筆頭格にまでなってしまいました。そのお店は…
中国菜大鵬|大衆中華料理店から京都を代表する本格的四川料理店へ大きく発展…一方で懐かしの名物料理「てりどん」も健在
日本の国技・大相撲で優勝回数32回を誇る昭和時代の名横綱・大鵬。その名横綱と同じ名前を持つ中国菜 大鵬は、現在JR二条駅近くで営業中の中華料理店。当初は旧二条通で先代の渡辺敏弘さんが店を営んでいましたが、現在は他の中華料理店で修行を重ねてきた息子さんも厨房へ入るようになり、お店も新しく今風のお店にリニューアルしました。今となっては、京都の中華料理ランキングの常連店の1つです。
店内に入ると、向かって右側に厨房があり、客席にはカウンター8席に4人がけテーブルが6つ。僕が訪れたのは夜8時頃の夕食真っ盛りの時間帯ですが、奥のテーブルが予約席になっていた以外はお客さんでいっぱいでした。各々がビールやワインを片手にワイワイガヤガヤ…非常に活気のあるお店、というのが僕の第一印象ですね。
店内の照明は橙色の暖色系、壁には中国風の絵画がいくつも飾られ、厨房の上には漢字で何やら文章が書かれ…これらの内装には、元デザイナーの先代のアイデアが活かされているのかもしれません。
本格四川料理もありますが、どう見ても和食のてりどんもあり…型にとらわれないスタイルも人気の秘訣
大鵬は容赦ない辛さの本格四川料理が味わえる店として有名ですが、四川料理だけにこだわるつもりもないようです。
例えば、大鵬の名物として知られる「てりどん」。この後ご紹介しますが、どう見ても和食にしか見えないてりどんを、他の中華料理と一緒にメニューに載せています。お酒の項目を見れば、ビールや紹興酒に混ざってワインや日本酒もありますし、美味いものなら何でも…というスタイルが堅苦しくない店の雰囲気作りにも一役買っていることでしょう。
宮崎ハーブ鶏の唐揚げ:ジューシーなもも肉とサクッと柔らかい衣…お酒に合うおつまみ的な一皿
それでは、今回注文した料理を3品ご紹介します。まずは中華料理の定番、かつ個人的にも外せない、宮崎ハーブ鶏の唐揚げ 1150円。画像はこちら…
鶏卵大の唐揚げが5個。コスパを気にする人にとっては、ボリュームは物足りないかもしれません。衣はしっかり厚いのですが、色づきからも低温でサッと揚げているのでしょう。柔らかく、サクッとかみ切れます。中身は宮崎ハーブ鶏のモモ肉で、断面からジュワーっと肉汁がにじみ出てきます。
肉や衣に下味はついていませんが、シンプルに塩をつけて、口の中で肉汁とブレンドしてみてください。一品料理としてもいけますが、ビールのおつまみとしてピッタリな感じです。
牛肉麻婆豆腐:豆板醤や花椒をたっぷり効かせた本場の味…だけど意外に食べやすくレンゲがのびる、おすすめの一皿
左京区にある四川料理の名店・駱駝と同じように、豆板醤や花椒を十分に効かせたピリ辛麻婆豆腐です。メニューにも2本の唐辛子マークがで辛さをアピールしていますし、下の画像でもその辛さが十分に伝わるのではないでしょうか…
でも、一口食べてみると、意外にもその食べやすさに驚きます。駱駝の麻婆豆腐はご飯と交互に食べ進めていく感じですが、大鵬の麻婆豆腐はそれ自体をレンゲですくって何度でも口に運べる辛さです。個人的にはこちらの麻婆豆腐の方がおすすめできますね。
唐揚げと同じくコスパを気にする人におすすめするのは難しいですが、美味い麻婆豆腐を食べたい気持ちが勝ったら、ぜひ一度食べてみてください。
てりどんきんし:甘辛ダレで炒めたたっぷりの豚肉と、タレの味を吸い込む錦糸卵…大鵬の名物メニューはやっぱりおすすめ
そして最後にご紹介するのが、大鵬にやって来るほとんどのお客さんが食べて帰ると言っても過言ではない、名物メニューの「てりどん」。先代が勤めていた店のまかない料理から生まれ、開店当初からずっと大鵬を支えてきました。
ある時、店で余った錦糸卵をてりどんに加えたところ見事にハマり、ノーマルてりどんに加えて「てりどんきんし」も誕生。現在はこの2種類のてりどんが、ミニ、普通盛り、地獄盛りの3段階のボリュームで注文できます。
地獄盛りって、どれだけのデカ盛りで出てくるのでしょうか…そんな怖いもの見たさの興味もありましたが、今回は無難に普通盛りのてりどんきんしをオーダーしました(ちなみに食べきれない料理は、容器代プラス30円でお持ち帰りもできるようです)…
白いご飯の上一面を覆う、褐色のタレを身にまとった豚肉のスライス。そのタレを受け止めるように、豚肉とご飯の間に錦糸卵が敷かれています。
見た目の第一印象は「豚肉の生姜焼き」。どう見ても中華ではなく和食です。味の方も見た目そのまんまで、生姜こそないものの濃い目の味つけの甘辛ダレが口の中でご飯をどんどん呼び寄せます。
もう、とにかくご飯が進みます。そのご飯にまぎれて、いい塩梅にタレを含んだ錦糸卵が、ふわっと優しく口の粘膜を刺激…自宅でも簡単に作れそうで、大鵬に来ないと食べられないクオリティーのてりどん。そりゃあ、みんな注文しますよね。
よだれ鶏:ボリュームには落胆も、麻辣とパクチーの組み合わせで新たな味を発見
続いて4品目…ネットの口コミで絶賛されている「口水鶏(京都丹波黒鶏のよだれ鶏)」という料理があります。前回は食べることができず、再訪することがあれば真っ先にオーダーしようと思っていた一品です。
メニューによると、フルサイズがお値段1600円、ハーフサイズが1-2人前で1000円とのこと。このよだれ鶏だけで注文を終えるつもりはなかったので、ハーフサイズでオーダーしたのですが…
大鵬の料理はどれもボリューム少なめなのですが、よだれ鶏のボリュームには正直ちょっとがっかりしました。麻辣のかかった鶏肉の小皿と太めの春雨が入った小皿の2皿出てくるのですが、一品料理ではなくてお酒のつまみとして考える方が良さそうです。
ただ味の方は評判通り。おそらく牛肉麻婆豆腐と同じ麻辣にナッツ、ネギ、ゴマ、パクチー…人肌程度に温かい鶏肉は柔らかく、ナッツのかたさと食感のコントラストを形成。そこにかかった刺激的な麻辣だけでも箸が進むのですが、パクチーを添えると「毒で毒を制す」ように麻辣の刺激とパクチーの刺激が中和されて複雑かつマイルドな味にかわるような気がするのです。パクチー苦手な人にはおすすめできませんが、お酒が好きな人ならなおハマるのではないでしょうか。
そして、鶏肉を食べ終わって残った麻辣をそのまま残すのはもったいない…ということで、この中に春雨を入れてしまいましょう。春雨でさらに辛さは薄まり、大鵬の麻辣の旨味を最後まで余すところなく楽しむことができます。
汁なし担々麺:中国の拉麺を強く意識した一杯は、日本のラーメン屋では味わえない新鮮な味
そして5品目…よだれ鶏と一緒に注文したのは、汁なし担々麺(お値段1200円)。日本では夏の風物詩ですが、「重慶小面」と書くように重慶では屋台で食す名物料理だそうです…
丼の底にたまっているタレと麺をしっかり混ぜて、いざ実食…まず大鵬の汁なし担々麺は、麺が他店と大きく違います。日本のように強いコシを求めて打った麺ではなく、中国の拉麺のように小麦を伸ばして作った麺のような、独特のモチモチ感がある麺です。このような麺は日本で食べる機会が少なく、かえって新鮮に感じられます。
次に、麺と和えた担々麺のタレ…思ったほど辛くありません。牛肉麻婆豆腐やよだれ鶏の辛さと比較すると、明らかに辛さはマイルドです。そして日本の担々麺のような白ゴマペーストも入ってなく、肉味噌の味がそのまま麺と一体になって口の中に飛び込んでくる感じです。
このように中国の汁そばを強く意識した大鵬の汁なし担々麺、よくあるラーメン屋の汁なし担々麺とは別の食べ物とお伝えしてもいいでしょう。バックパッカー上がりの僕としては、こういうの好きですね。
中国菜大鵬へのアクセスは、最寄り駅のJR(京都市営地下鉄)二条駅から徒歩3分
それでは、店舗の詳細です。
お隣の二条城や西大路御池駅からもそれぞれ10分ちょっとと、少し気合を入れれば歩いて行ける場所にあります。
P.S. 京都で美味しい中華料理をお探しのあなた、ぜひこちらの記事にも立ち寄ってみてください…
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