味噌汁一杯で行列を作る和食店…あなたもきっと興味をそそられるのではないかと思います。世界に和食店は多けれど、味噌汁を看板メニューにしているお店には今まで出会ったことがありません。
日本人なら誰でも飲んでいる味噌汁。家によって使う味噌も塩加減も異なり、家の数だけこだわりがあると言っても過言ではない味噌汁。そんな味噌汁で行列をつくる店とは、一体どんな店なのでしょうか…
志る幸|味噌汁一杯を求めて客が絶えない京都・河原町の汁物専門店
テレビ番組や食べログ・ぐるなびなどのポータルサイト、数々のブログや雑誌で紹介されている京都の汁物専門店「志る幸(しるこう)」は、昭和7年に京都市内で創業して現在で87年続く老舗です。平安時代の風習「汁講」からとった店名通り、一杯の汁におもてなしの心を込めることを方針としており、常時白味噌、赤味噌、すましの3種類の汁物と10種類以上の具材を用意しています。
元々は幕末の勤王志士・古高俊太郎の住処だったというこのお店…建物は歴史を感じさせる造りですが、店内はちょっと狭いです。暖簾をくぐると目の前に小上がりの座敷があるのですが、ここは客席ではなくてお店のスタッフの導線として機能しています。それを取り囲むようにしてカウンター席が8つ、その後ろの通路を隔てて壁側に同じくカウンター形式の席が8つあります。
日本の伝統芸能・能の舞台を模したという席の配置上、仲間数人でゆっくり昼ごはん…というような食事には正直不向きです。実際、他のお客さんも会話を最小限にして、静かに黙々と食事をしています(もちろん、お店側にやらされているのではありません)。その分お一人様にとっては利用しやすく、特に上質な和食ランチを比較的短時間で済ませたい場合にはうってつけでしょう。
このカウンター席の奥にも個室の座敷があり、夜は事前予約でゆっくり寛ぎながら懐石料理をいただくこともできるようです。ランチの予約は不可なので行列覚悟でやって来なければなりませんが、高級和食店としては比較的回転は早いので、タイミングが合えば待ち時間も短く入店できるのではないでしょうか。
昼も夜もオーダーできる志る幸の利休辨當(弁当)…追加料金で味噌汁の具材変更(おとしいも)がおすすめ
今回注文したのは、圧倒的多数のお客さんが注文する定番の利休辨當(弁当) 2500円。そのままの値段で白味噌豆腐の味噌汁がつきますが、具材をおとしいもに変更してもらいました(+650円)…
盛り台の中央には扇状にかたどられたかやくご飯。これにぜんまい煮、きゅっと締まった弾力のある卵豆腐、脂の乗った鮭の焼き物、柔らかく上品な風味の若どりの旨煮、わさびの効いたきゅうりのぬた和えの5品のおかずがついてきます。
そして、志る幸ではメイン料理の味噌汁(白味噌、おとしいも)は…
蓋をあけると一気に広がる出汁の香り…黒色の漆器に生える白味噌の味噌汁…その中に白雪のような山芋のすり下ろしをだんご状に落とし、おとしいもの頂上に白ごまをトッピングしています。味噌汁は心安らぐ優しい甘さで、普段合わせ味噌を使っているご家庭ではなかなか出せない味に仕上がっています。
志る幸に来るまで「味噌汁にとろろ」というイメージは全然ありませんでしたが、この一杯で完全に味噌汁に対する認識が変わりました。味覚だけでなく触覚的にも優しさを演出すると言いますか…白味噌の甘さと山芋のふわとろ感がすごく合っているのです。食べ進めると山芋が味噌汁へ溶け込んで、サラサラだった汁が次第にねっとり濃厚な味噌汁へ変化していくのですが、そんな過程もこの一杯で存分に堪能できます。
率直に言って、成人男性にとっては利休辨當だけではボリュームが足りないと思いますし、その分「高いなぁ…」と感じるかもしれません。でも、近くの祇園や先斗町のランチもこれくらいの金額はしますし、他店にはない「おもてなしの味噌汁」がどんなものか、一度体感する価値は十分にあると思います。
利休辨當以外にもあるお昼のご飯メニュー…持ち帰り用のお土産商品もあります
志る幸のランチと言えば利休辨當…というくらいにほとんどのお客さんが弁当を注文するのですが、志る幸では弁当以外のメニューも注文できます。どれも名前を聞くだけで興味をそそられる贅沢メニュー…これに味噌汁をつけて食べる姿を想像するだけでお腹が空いてきます。
- 穴子丼 1600円
- うに丼 2300円より
- 鯛めし丼 1600円
- のり茶 850円
- 鯛茶 2000円
- 天茶 2000円
また、持ち帰り用のお土産メニューも準備されているので、ご自宅で志る幸の味噌汁を味わうこともできます。
- 鯛ちりめん 1260円
- 酢みそ 750円
- 椎茸昆布 500円
- 京の白みそ汁 1050円(4人前)
これらのメニューの他にも、冬季には限定メニューとして白味噌雑煮も食べられるようです。正月が近づいたら、今度はお雑煮を食べに行ってみようと思います(年末年始も営業しているのでしょうか?)。
お雑煮:志る幸おなじみの白味噌汁に柚子の香りをプラス…飾らないけれど質の高さが伝わる一杯
というわけで、2020年の年末にお雑煮(お値段 1100円+税)を求めて再訪。正月に各家庭で食べるお雑煮は、出身地ごとに、各家庭ごとにレシピが違います。そんなバリエーションの多いお雑煮、志る幸さんはどう作るのか興味津々…
志る幸おなじみの白味噌汁に、純白の丸いお餅が2つ。他には数条の鰹節と小口ねぎ、香りづけの柚子の皮のみのシンプルな構成です。
やっぱり美味い志る幸の白味噌汁。おとしいもの味噌汁と比較すると、山芋のねばりが味噌汁に移らない分汁がさらっとしていますが、心落ち着く優しい甘さは相変わらず。これに柚子の香りが加わることによって、器から伝わってくる飾らないけれど上質な感覚が2倍、3倍となって押し寄せてきます。
焼き目のついていない真っ白なお餅も、この上質感を邪魔せずうまく溶け込んでいます。引き算の美学というか、物でいろいろ飾らなくても人間って幸せになれるんだなぁ…というのを、この一杯から十分に感じ取ることができます。
鯛めし丼:鯛フレークが決め手の手の込んだ一杯…山椒の香りで京都らしさを演出
そしてもう一品。お雑煮単品だけでは申し訳ない…ということで注文した鯛めし丼(お値段 1600円+税)。志る幸の鯛めし丼は一般的にイメージされる鯛めしとは違って、こんな感じで出てきます…
白ご飯の上に均一にかけられた鯛の身のフレーク…というか、身が細かすぎて粉雪のようにきめ細かくなっています。所々に小さい緑の粒が見えますが、実山椒がこの中に散りばめられています。
これを見て、「なぁ〜んだ。愛媛の松山とか宇和島で食べるような鯛めしじゃないの…」とがっかりすることなかれ。このきめ細かくふわふわの鯛フレーク、なかなかやります。
ご飯1粒1粒の隙間にフレークが入り込んでまんべんなくコーティングするので、味にムラが出ずご飯を美味しくいただけます。この鯛フレークを使ってお茶漬け作ったら、絶対美味いと思いますよ。そう思うと、鯛茶漬けにしなかったことにちょっとだけ後悔の気持ちも芽生えます。
絶品味噌汁やおとしいものレシピを一般公開?志る幸へのアクセスは、最寄り駅の阪急京都線・河原町駅から徒歩1分
それでは、店舗の詳細です。
最寄り駅転河原町駅の先斗町側の出口を出て、一本北の路地を左へ曲がったところにあります。京阪電鉄の祇園四条駅からも四条大橋を渡って徒歩3分程度ですし、京都駅方面からも四条河原町バス停で降りてすぐと、アクセス抜群の場所にあります。京阪電鉄の三条駅からも、徒歩9分の距離です。
志る幸さんのホームページによると、志る幸さんは昔「季節を味わうご飯と汁ー京都志る幸」という本を出していたみたいですね。今は古本でしか売っていなさそうですが、絶品の味噌汁やおとしいものレシピが気になる方はAmazonなどで探してみてもいいかもしれませんね。
余談ですが、東京の六本木に志る幸さんそっくりな「志る角」というお店があるようですね。今度東京に行ったら寄ってみようかな…
P.S. 京都で美味しい和食をお探しのあなた、ぜひこちらの記事にも立ち寄っていってください…
P.P.S. ここのお雑煮も半端なく美味かったな…
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