かつて裏難波エリアで超絶な人気を獲得していたうどん店・釜たけうどん。関西の讃岐うどんブームの立役者として名高い名店…その釜たけうどんの店主・木田武史さんが、2018年3月に新たなうどん店をオープンしました。釜たけうどんでも新ジャンルのうどんメニューを開拓してうどんファンに衝撃を与えていましたが、新しい店でも新メニューでうどん業界を盛り上げ続けています…
その新店・き田たけうどん(きだたけうどん)があるのは、元の釜たけうどんがあった場所から5分ほど南に歩いたところにあります。南海電鉄のなんば駅と日本橋の電気街のちょうど中間くらいと言うとわかりやすいでしょうか?裏難波とはまた違う、独特な雰囲気のあるディープなエリアです。
そのエリアにあったガレージを改装してオープンしたき田たけうどんは、木目調でシンプルながら暖かい雰囲気のあるお店でした。うどん屋としてはかなり広めなスペースに、客席数はカウンター席とテーブル席を合わせて20人ちょっと。奥の一段高いところに調理場があって、店主が調理場からお店全体を見下ろせるような構造になっています。
新メニュー中心ながら往年の人気メニューも楽しめる、き田たけうどんの親切なメニュー構成
そんなき田たけうどんのメニューを眺めると、釜たけうどん時代と同様、個性的な名前の商品名がズラリと並んでいます。
炙り牛トンぶっかけ(お値段 税込1100円)や豆腐タルタルぶっかけ(お値段 税込1000円)といった、讃岐うどんをベースにしたアレンジメニューの中に、往年の人気メニューであるちく玉天ぶっかけやキムラ君(自家製ラー油をかけた冷たいまぜ麺)を忍ばせているところがニクいですね。新規のお客さんだけでなく、釜たけうどんの味を求めてきた昔のお客さんの期待にもしっかり応えてくれます。
き田たけうどんのメニュー例
- 炙り牛トンぶっかけ 1100円
- 豆腐タルタルぶっかけ 1000円
- なめこおろし 800円
- ちく玉天ぶっかけ 800円
- キムラ君 800円
麺の量は標準で400g。プラス100円で大盛り(麺600g)に増量可能です。
とりひやし:き田たけうどんの新チャレンジ・大阪つけ麺は何が新しいのか?そして肝心のお味はいかに?
これらのメニューの中でも、き田たけうどんの大きなチャレンジとなっているのが、「大阪つけ麺」と掲げたつけ麺メニュー。僕が簡単にググった範囲では「大阪つけ麺」という名の食べ物はこれまで存在せず、おそらくき田たけうどんが名乗ったのが初めてでしょう。
「大阪のつけ麺とはこれだ!」と全国の食いしん坊にアピールするかのようなネーミングに、お店の並々ならぬ覚悟を感じます。また、過去に関西に讃岐うどんブームを巻き起こした釜たけうどんの実績があるからこそ、この「大阪つけ麺」という名前が説得力を伴って、僕たち食べる側にも魅力的に伝わってくるような気がします。
その大阪つけ麺はトッピングの違いによって数種類あるのですが、今回僕はその中の最上級メニューである「とりひやし(お値段 1100円、プラス100円で大盛りにしています)を注文しました。他のお客さんを見ていると、この時のお客さんの3分の2くらいはこの「とりひやし」を注文しているようで、すでにちく玉天ぶっかけやキムラ君を超えるき田たけうどんの一番人気メニューになっているのかもしれません。
で、実際に目の前に運ばれてきたとりひやしがこちら…
中央に関西風うどんだしに浸ったうどんがあって、その両側にとり天とうどんのつけ汁がありますね。お店の人によると、このうどんはかなりの長さがあるようで、食べやすい長さに調節するためにハサミが一緒に出てきます。
では、まずうどんを浸している出汁からいただきます…薄味ながら鰹節がしっかり効いた、まさに直球ど真ん中の正統派関西風うどん出汁です。雑味がなくて、鰹節の香り高いうどん出汁…特に夏の暑い時期なら、うどんを食べるのを忘れてゴクゴクいってしまいそうになる上質な出汁。冷やしなので味はちょっと軽く感じますが、温うどんの出汁ならこのままお客さんの前に出してもおかしくないくらいです。
次に、この出汁に浸かった麺をすすってみます…麺の太さは釜たけうどん時代からだいぶ細くなりました。ラーメンで言うと中太麺くらいの太さでしょうか。もはや讃岐うどんと呼べるような麺ではなくなりましたが、あくまでこれは「大阪つけ麺」。大阪のご当地うどんを開拓するという意味で、僕はこの変化を大いに歓迎します。
でも麺が細くなったからといって、うどんの食感まで失われてしまったかというと、全然そんなことはないんですね。以前と変わらず、ものすごい麺のもちもち感。それでいて、麺が細くなった分噛み切りやすくなって、とっても食べやすいうどんになっています。
ちなみにこのうどん、おそらく長さは1m以上あるんじゃないでしょうか。店員さんが言うだけあって、過去に経験がないくらいめっちゃ長いです。「長生きできますように…」との願いを込めて食べる年越しそばに準じて、このき田たけうどんの麺を食べるのも、大阪の新しい年末の過ごし方として面白いかもしれません。
そしてもう一方のつけ汁ですが、こちらは対照的に一般的なつけ汁の1.5〜2倍くらいの濃度があります。鰹節が効いた醤油ベースの出汁に、相応の甘味も感じる濃厚なつけ汁。そのままでは濃すぎると感じる時も、うどんを浸けている出汁を使ってお好みの濃度に味を調節できるのでご安心を。
忘れてはならないとり天は、厚めの衣に肉厚むね肉の食べ応えのある一品。普段の僕はもも肉の方が好きなのですが、さっぱり食べたい冷やしうどんにはむね肉の方が合ってますね。濃厚なつけ汁に浸して食べれば味もしっかりつきますし、せっかくの上質うどん出汁が脂まみれになることもありません。
こうして2種類の味を同時に楽しめる大阪つけ麺、個人的な感想としてはとても満足度が高い仕上がりでした。めっちゃおすすめです。これに大阪の実力派うどん店が追随して、本当に「大阪つけ麺」というジャンルが確立するようなことになったら面白いことになりますね。讃岐うどんに負けない大阪発のうどんとして、新たな大阪の名物になるように密かに期待しています。
ちく玉天ぶっかけ:釜たけうどん時代の一番人気メニューが細麺になってリニューアル!さて、細麺になって何か変わった?
せっかくなので、往年の人気メニューもご紹介しましょう。こちらは釜たけうどん時代に一番人気メニューだったちく玉天ぶっかけ。下の画像は大盛りで、お値段は900円なり…
丼に収まりきらないほど長いちくわ天と、揚げるのにかなりの技術が要りそうな半熟卵の玉子天がトッピング。見た目はシンプルですが、どことなく他とは違う雰囲気を持っています。
では、実食…細麺になったからといって、麺のもちもち感は相変わらず。冷たい鰹出汁がしっかりと麺に絡み、細麺になった分麺の喉越しは釜たけうどん時代より良くなっています。
その一方で、新麺ならではのマイナス点も1つ。その原因は、麺の細さではなく長さに由来します。どういうことか?というと、麺が長すぎるゆえに麺が丼の中で絡まって引っ張り出しにくくなっているんです。とりひやしの時は麺が十分な量の出汁に浸かっていたので気づきませんでしたが、ぶっかけだと出汁の量が少ないので、麺同士の絡み合いがよりはっきりとしてくるのです。
き田たけうどんのめっちゃ長い麺はお店の新しい個性だと思うので、これを失くして欲しいとは思いません。でも、率直に言ってちょっと食べにくいというところはあるかな…そういう意味では、昔のちく玉天ぶっかけの方が僕は好きですね。
伝説のキムラ君:一度食べたらきっとまた食べたくなる…釜たけうどん時代のもう1つの看板メニュー
そして、釜たけうどん時代のもう1つの看板メニュー・伝説のキムラ君もご紹介。き田たけうどんになって新しいことにチャレンジしながらも、昔からのファンのために過去のメニューも残してくれるのはすごく嬉しいですよね…
き田たけうどんになって細麺バージョンになったキムラ君はこんな感じ。昔はこれにイカ天をつけた「イカしたキムラ君」というメニューもあって、僕はこれが好きだったんですよね。イカ天バージョンも復活してくれないかなぁ…
それはさておき、実食。キムラ君の本質は生醤油うどんで、麺に出汁醤油をかけて食します(余談ですが、讃岐うどんでは「生醤油」うどんなのに「出汁醤油」を使っているって知ってました?)。細麺になってから麺を混ぜにくくなったのは難点ですが、うどんをより美味しくするための儀式と考えれば、この程度の苦労は何てことありませんよね。
もちろん出汁醤油単独でも美味なのですが、これにキムチや食べるラー油、大量の胡麻が加わった伝説のキムラ君はとにかく香ばしいんです。出汁醤油とコチュジャンがミックスした深みのあるピリ辛味を舌の上で感じたと同時に、白胡麻+ラー油のダブルパンチでゴマの香りがガツンと…
これを読んでくれているあなたは、もしかして「うどんにキムチを合わせたうどんって、まずいんじゃないの?」と思っているかもしれません。でも、そんなあなたにこそ機会があればおすすめしたいです。キムチと出汁醤油、そして食べるラー油のコラボで生み出される深みのあるピリ辛味、一度食べたらきっと忘れられなくなると思います。
そのうち夜営業も開始?き田たけうどんへのアクセスは、最寄り駅の南海電鉄・なんば駅から徒歩3分
そんなき田たけうどん、今はランチタイムのみの営業なのですが、実は開店当時から夜営業も視野に入れているようです。実際お店の冷蔵庫には、お客さんにも見えるように日本酒の一升瓶がぎっしりと…僕のイメージ的にはうどんと日本酒ってあまり噛み合うイメージがないのですが、き田たけうどんがやるとどうなるんでしょうね?夜の営業開始も楽しみに待ちたいと思います。
それでは、お店の詳細です。店舗データはこちら…
P.S. 大阪で美味しいうどんをお探しのあなた、ぜひこちらの記事にも立ち寄ってみてください…
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