和食を中心に歴史のある飲食店が多い京都ですが、喫茶店でも昔からの流れを感じさせる味のあるお店が市内に点在しています。これらの老舗喫茶店のいくつかは独自の世界観から観光客の間でも人気となり、京都観光中のお目当ての1つに入れられることも決して珍しくありません。
その中の代表格として有名なのが、1947年に創業して80年以上続くイノダコーヒ。京都市中心部以外にも東京の大丸や横浜の高島屋、広島の福屋など百貨店にも出店しているので、もしかしたらあなたもお店の名前くらいは聞いたことがあるかもしれません。
その歴史ある老舗喫茶店・イノダコーヒの本店に、ある平日の朝に行ってみたのですが…
200席を超える広大なカフェスペースに美術品やマスコット…コーヒー以外でも楽しませてくれる大人好みの喫茶店
店内に入ってみると、平日の朝にも関わらず人でいっぱい…入り口をくぐるとまずお土産・ギフトなどを購入できるショップエリアがあって、その奥に喫茶エリアが続くのですが、その喫茶エリアのテーブルへの案内待ちのお客さんで混雑しているのでした。
とは言っても、満席ではなくフロアスタッフの多忙が原因だったので、待ち時間は10分程度で済みました。なにせイノダコーヒの本店は本館の他に旧館とメモリアル館と3つの建物を抱えていて、総席数は優に200席を超えるそうな。そう簡単に満席になることはありません。
その喫茶店としては広すぎる店内には、芸術家であった創業者・猪田七郎氏の作品やコレクション、さらにマスコットとしてお店に貢献しているインコがお客さんの目を和ませてくれます。
そんな喫茶店なので、今流行りのスタバなんかとは全然客層が違います。ほとんどのお客さんが僕より上の年齢層で、新聞を持ち込んでコーヒー片手にじっくり読んだり、仕事の商談なんかに使ったりしている人が多い印象です。僕のようにひとりぼっち客でも場に馴染むとは思いますが、イチャイチャ系のカップルやノートPC持ち込みでデキる男アピール系の人はちょっと浮いちゃうかもしれません。
イノダコーヒのメニューはコーヒー1杯650円からと高めの値段設定…でもスタバでは得られない静かなカフェタイムを満喫できます
席に案内されると、A3用紙表裏1枚の写真付きメニューを渡されます。イノダコーヒのメニューはドリンク系からフード、デザート合わせて50種類以上あって、軽く一杯飲みたい時から少しお腹を満たしたい時まで、さまざまなシチュエーションに対応できます。
気になるお値段は、コーヒー1杯650円からと、スタバなどと比べると倍くらいの値段設定。その代わり、若者で一杯のスタバではほぼ不可能な静かな時間を過ごせます。
お客さんの雰囲気も落ち着いている人が多いし、コーヒー1杯でも店員さんにプレッシャーをかけられたりすることもないので、自分の思い通りのカフェタイムを過ごせるのが嬉しいですね。何ならフードメニューをつまみながら1日中いたって、きっと変な目で見られたりすることはないと思いますよ。
イノダコーヒ本店のフードメニュー例(値段は税込)
- ビーフカツサンド 2000円
- ボルセナ 980円
- フルーツサンド 900円
- フレンチトースト 650円
- フルーツパフェ 1100円
- ジャンボシュークリーム 700円
- ケーキ 600円
京の朝食:京都の観光客に大人気のモーニングメニュー、実際食べてみると…
それでは、イノダコーヒ本店のメニューの中からいくつかご紹介しましょう。まずは京都の観光客に大人気のモーニングメニュー・京の朝食(お値段 税込1600円)。朝ごはんとしては出費はデカいですが、なんか高級ホテルの朝食みたいなのが出てきましたよ…
ワンプレートで出てきたメインは、バター風味のふわとろスクランブルエッグに、ドイツの伝統製法で作られた分厚いボンレスハム2枚。その他ポテトサラダ、キャベツの千切り、アスパラガス、にんじんなど、しっかり野菜も摂れるバランスのとれた洋朝食。これにバターの風味が効いたほかほかクロワッサンにドリンク2種類がついてきます。
これらの1つ1つが、シンプルな味付けで美味いんですよね。そのまま食べても美味しく、そこに軽く塩胡椒を振るだけで旨味がさらに増す感じ。クロワッサンを口に放り込むと、ふわっと漂うバターの香りが眠った脳を優しく刺激して…寝起きでまだ半分眠った状態の朝には、こういうゆっくりと頭と身体を活性化させてくれるような朝ごはんが嬉しくないですか?朝の11時まで注文できるので、ちょっと遅めのブランチとしてもおすすめです。
アラビアの真珠:イノダコーヒ創業時からの一番人気メニュー…まずは砂糖とミルク入りがおすすめ
さて、この京の朝食にはドリンクが2種類ついてきます。1つはオレンジジュースで、もう1つはコーヒーか紅茶のどちらかを選びます。僕はコーヒーを選んだのですが、そのコーヒーの中でもおすすめなのが、イノダコーヒ創業時からの一番人気メニュー・アラビアの真珠(お値段 税込650円)…
モカをベースとした深煎りのブレンドコーヒーで、創業当時から変わらないネルドリップ方式で淹れてくれます。ブラックでももちろんいただけるのですが、砂糖とミルクを入れて飲むのがイノダコーヒの基本スタイル。
これがまた朝食に合うんですよね。ミルクと砂糖を入れてまったり飲みやすくなっているはずのコーヒーですが、それをさらに上回る存在感の苦味と香り…これが強すぎず弱すぎず、朝の眠気を覚ますのにちょうど良い塩梅になっているんです。
これ、ブラックで飲んだらどうなんだろう…きっと強烈な苦味とコクで身体をシャキッと引き締めてくれるに違いない。次回の訪店に向けて、俄然興味が出てきました。でも、イノダコーヒにはアラビアの真珠の上をいく深煎りコーヒーもあるのだとか。重厚なコーヒーが好きな人にはたまらないですよね。
イタリアン:蓋付きの銀皿で供されるリッチなスパゲッティ・ナポリタン。極太麺と濃厚トマトソースが…
イノダコーヒのランチメニューからも1品ご紹介しましょう。こちらもイノダコーヒと言えば…と名前が上がるくらいの名物メニュー・イタリアン(お値段 税込980円)。名前はイタリアンですが、実際は…
蓋付きの銀皿で供されるスパゲッティ・ナポリタン。きっと、今のようにイタリア料理が食べられなかった時代に、イタリアへの憧憬から名付けられたんでしょうね。喫茶店でナポリタンを食べるのが贅沢だった時代があったのです。
最近のパスタ屋さんではまずお目にかかることのない極太麺は、アルデンテを通り越して芯まで熱が通った茹で加減。だけど、茹で過ぎてクタッとなった状態とは違うんです。弾力があってもちもちで、ここに酸味の少ない濃厚トマトソースがしっかりと絡みます。
そして、そのパスタを飲み込んだ後に残るトマトソースの余韻がまたいいんですよね。まずパスタを食べて、その後口に残ったトマトソースのねっとり感と甘さを楽しめる味の二段構造。ナポリタンって今はあまり人気がありませんが、こんなのを食べたら「やっぱりナポリタンもいいなぁ…」ってなりますよね。特に昭和の時代の記憶がある人なら、絶対に懐かしくなると思いますよ。
朝7時から開いてます!イノダコーヒ本店へのアクセスは、最寄り駅の京都市営地下鉄東西線・烏丸御池駅から徒歩5分
そんなイノダコーヒ本店、ありがたいことに朝の7時から営業しています。これは嬉しいですよね。朝の散歩がてら朝食をとりにきたり、通勤前に一杯飲んで身体に喝を入れたり…観光客にも地元の人にも、あらゆる用途で利用されています。こんな喫茶店が家の近くにあったら…って、あなたも思いませんか?せめて京都にいるときだけでも、その気分を味わってみてはいかがでしょうか?
それでは、お店の詳細です。店舗データはこちら…
JR京都駅からバスを利用する場合は、市営バス205番系統・北大路バスターミナル行きで河原町三条バス停下車、徒歩8分です。
P.S. イノダコーヒで長年修行された方が、独立して清水五条でカフェを開きました。こちらのカフェも、すでに行列ができる人気店です…
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