フレンチ出身のシェフが開いたラーメン屋…最近はそんな謳い文句もさほど珍しさを感じなくなってきました。最初は興味本位で集客できていたお店も、実力がなければ次第にお客さんが離れていって閉店に追い込まれる厳しい時代。そんな中、開店してたった1年ちょっとでミシュランのビブグルマンに掲載され、テレビや食べログなどでも大注目を集めているラーメン店があります…
銀座八五|開店からあっという間にミシュラン選出!名フレンチシェフがついに完成させた究極のラーメン…そのお味はいかに?
そのお店・銀座八五(はちごう)は2018年12月、華やかな大通りから少し離れた東銀座の一角に店を構えました。店内は割烹のような佇まいにカウンター6席のみの小さなお店。この小さなお店に、店主と4人のお弟子さんが所狭しと動き回っているのが印象的でした。
その店主・松村靖さんは、長年フレンチの世界で活躍してきたベテランシェフ。京都全日空ホテル(現・ANAクラウンプラザホテル京都)の総料理長時代に京都府から「現代の名工」に選出され、平成28年には厚生労働大臣からも表彰を受けたこともある華々しいキャリアの持ち主が、定年退職後にラーメンの研究を始めて上京。2015年に最初のラーメン屋「中華そば 勝本」をオープン。2016年に2店舗目「神田 勝本」のオープンを経て、この「銀座八五」が3店舗目になります。
さて、僕が銀座八五を訪れたある週末…午前11時頃にお店に到着すると、店頭で若いスタッフが整理券を配布していました(デポジットとして1000円が必要です)。新型コロナ対策の1つとして、行列回避のために始まったようです。
僕が受け取った整理券には「集合時間 12:20」と書かれています。一旦お店を離れて1時間ほど待ち時間をつぶすことにして、12時過ぎにお店を再訪。この時はすでに暖簾が片付けられていて、昼の部の整理券配布は終わっていました(1日に提供できるラーメンは、昼と夜を合わせて150〜160杯が限度だそうです)。
12時過ぎにお店の前に戻ってくると、行列とまではいかないまでも、12時前後集合の整理券を持ったお客さんが数人並んでいました。実際の入店は整理券に書かれた番号順なので、早く戻ってきた分早く入店できるわけではありません。整理券の番号順に並び直して、店員さんからのコールがかかるのを待ちます。この待ち時間の間に、整理券と引き換えにデポジットの1000円が返金されます。
銀座八五のラーメンメニューは中華そば1種類…今後、季節のそばや特製肉ご飯にも期待大
そんな銀座八五のラーメンメニューは、現時点で中華そばの一択(ノーマルの中華そばと味玉付きの味玉中華そば、チャーシュー大盛りの特製中華そば3種類から選択)。メニュー表には「季節のそば」「特製肉ご飯」とありますが、これらのメニューはまだ開発中とのこと。特に値段は高めですが「季節のそば」には興味をそそられます。今後の正式メニュー化に大いに期待です。
銀座八五のメニュー(値段は税込)
- 中華そば 850円
- 味玉中華そば 950円
- 特製中華そば 1050円
- 季節のそば 3000円
- ご飯 150円
- 特製肉ご飯 350円
- ビール小瓶 250円
特製中華そば:見た目は普通のラーメンと変わらずも、製法は常識外れ…フレンチの技法をふんだんに盛り込んだ究極の一杯
僕がこの日にオーダーしたのは、中華そばの最上級メニュー・特製中華そば。下の画像のように、見た目には普通のラーメンと特に変わりはないのですが…
このラーメンのスープは、普通のラーメンとは全く違う常識外れな製法で作られているのです。その違いとは、タレ(かえし)を使わないこと。
普通ラーメンのスープは、鶏ガラ・豚骨などのダシと、醤油・味噌・塩などのタレを混ぜて作られます。ちょっと強引な例えですが、味噌汁の味噌と出汁に例えると、八五のスープは味噌の入っていない味噌汁…じゃなくて、お吸い物と同じようなものになるわけです。
まあ、お吸い物はお吸い物で美味いし、スープとして飲むだけならいいのですが…ラーメンのスープとして使ったら味が薄すぎないか?多くの人はそう思うはず。でも、八五のスープはその大きな問題をクリアしているからすごいのです。
では、どうやってその味を出しているかというと…まずは名古屋コーチン、鴨のもも肉とガラ、ドライトマト、干し椎茸、イタヤ貝、昆布などを6時間煮込んで濾しておき、翌日にイタリア産のプロシュート(生ハム)と、ほんの少しだけフランス産の天然塩を入れて塩味をつけるのだとか。スープの作り方もそうですが、使う材料も含めてフレンチ出身ならではの独特なレシピです。
そうして完成したスープは…
このようにかなり透明度が高く「やっぱり薄味なの?」と思ってしまいますが、口に含むと鶏の旨味が一気に口の中を占拠するほど味が染み込んでいます。そこに野菜から出た甘みと、少量の塩しか入れていないとは思えないほどの塩味もしっかり出ていて、見た目に反して重厚な味わいをもったスープです。それでいながら、喉元を過ぎる時には後味を残さずサーッと引いていく潔さがあり、何度もレンゲを口に運んで喉越しを楽しみたくなってしまいます。
さて、このスープに合わせる麺ですが…どうやらこちらも一筋縄ではいかないようです。製麺しているのは、東京では有名な老舗製麺所・浅草開花楼。一見普通のストレート麺ですが、この中にパスタで使うデュラム小麦を配合しているのだとか。歯応えよく、小麦の香りもしっかり出ていながらスープの風味を全く邪魔しない、このラーメンだけのために作られたオリジナルの中華麺です。
トッピングにも目を向けましょう。まずは豚バラ肉を使ったチャーシュー。口の中で噛まずにほどけていくほどの柔らかさで、肉汁もしっかり中に閉じ込められていてジューシー。さらに、この上に振りかかっているペッパーキャビアなる香辛料が鮮烈な香りを放っていて、ピリリとした刺激とともに強力なアクセントになっています。チャーシューもそうですが、このペッパーキャビアをスープに混ぜて飲むのも風味がガラッと変わっておすすめです。
味玉も外から箸で突くだけでわかる柔らかさなのですが、中を割ってみると黄身がトロッと出てくるわけではなく、黄身の形をギリギリ保てるくらいの絶妙な半熟度。スープが黄身で濁らないので、スープの味を最後の最後まで楽しむことができます。
食べ終わった後に振り返ってみても、本当に全てにおいてスキがないというか…細かいところまで計算し尽くされたラーメンですね。おいしくないわけがありません。水の代わりに希望で出してくれる水出しほうじ茶も香り高く、食後に飲むとラーメンの味をすっきりと洗い流してくれる上等なもの。口当たりの良いうすはりグラスも高級感を演出していて、ラーメンだけでなくお店の滞在時間全体がハイクオリティー。ラーメンの世界大会みたいなものがあったら、間違いなく日本代表に選ばれるのではないでしょうか。
何度でも食べたくなる極上の一杯…銀座八五へのアクセスは、最寄り駅の東京メトロ日比谷線(都営地下鉄浅草線)・東銀座駅から徒歩3分
それでは、お店の詳細です。店舗データはこちら…
東京メトロ有楽町線・新富町駅からは徒歩5分、東京メトロ日比谷線・築地駅からは徒歩7分と、地下鉄でのアクセス良好です。
P.S. 有名ラーメン店の多い激戦区・銀座。鶏白湯ラーメンのブームを引き起こしたお店も、銀座八五から徒歩圏内です…
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